Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
繁華街

気候が涼しくなると共に人々の往来は活発になる。それはこのシルバニアとて例外ではない。
道のぬかるみがなくなり馬や馬車にとって最も移動しやすい季節となるこの涼季。
近隣の諸都市から農作物や工芸品が馬車いっぱいに詰められて運ばれて来るだけでなく、
北のエルメキアやアルゲンタインといった遠い地方からも昨年取れた産物が運ばれてくる。

繁華街に連なる店々の営業開始時刻からまだあまり時間が経っていないことも関係しているのか、どこの通りも人混みに溢れている。



ユリア 「ねぇねぇねぇ、秘書ちゃん、知ってるー?」

「え?何をです?」

ユリア 「アークの方向音痴矯正計画。」

「は、はい?」

ユリア 「アークが小さかった頃ねぇ、マリアママに
 『迷ったら木の年輪を見るのよ』
 って教わっていたらしいの。」

「なるほど、それなら方向は間違えませんよね。」

ユリア 「でね、アークったら迷ったときのためにって、
 いつでも木の年輪を持ち歩くことにしたらしいの。
 しかも見やすいからって、両腕いっぱいに抱えるぐらいの大きさの。」

「……持ち歩くって
 あのー、それって根っ子が地面についていないから
 方角を調べる意味がないんじゃ……。」

ユリア 「そうなのよー☆
 だからどこまでも同じ方向に歩き続けちゃってー。
 壁にぶつかるまで歩いていたっていうんだからアークらしいわよねぇ。」

「…………普通ぶつかる前に気づくと思うんですが……。」

ユリア 「でねでね、
 いつまでたってもらちがあかないから
 そのうちに地図を持ち歩くようにって、マリアママに言われたらしいの。」

「確かにもっともですよね。」

ユリア 「それ以来、壁にぶつかると木の年輪を地面に置いて、
 地図を見るようになったんだけどその度に年輪を地面に置くもんだから、
 進行方向がころころ変わっちゃってー☆」

「…………ひょっとしてそれって、
 ただでさえきちんとし方角が掴めていないのに
 ますます状況悪化しません?」

ユリア 「そうなのよー☆ もうそこがアークらしくてー☆」

(それってアークライト師団長らしい……のかなぁ?)



▽ 中央公園へ行く
▽ 城壁へ行く
▽ 住宅街へ行く



▽ 書庫に戻る

OWNER
Copyright(c)1997-1999 FUBUKI KOGARASHI (木枯 吹雪) fubuki@kogarashi.jp 日本語でどうぞ。