Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
住宅街

雪も解け、ゆるやかに春の風が舞うこの季節。
住宅街の所々でも花のつぼみがわずかに地面から顔を出し始めている。
それまで耐えてきた長い冬を乗り越え、夏の来ないこの地方でわずかな春の陽気を楽しむかのように。

昼食の時間ということもあり、さっきまであれだけ屋外にでていた子供達はとりあえず家に戻っているようだ。
お昼ご飯が終わった後、再び外へ遊びに出掛けるのであろう。



「レナード将軍、先ほど聞き忘れていたんですけど……。」

レナード 「何だね。
 話は手短にして貰おう。
 私は忙しいのだ。」

「……さっきもそんなこと行ってましたよね?
 ってあれ?
 さっきアリスさんに会いに行ったんじゃないんですか?」

レナード 「開店準備で忙しそうだったのでそのまま戻ってきた……
 ごほん。そんなことはどうでもいい。
 それよりも秘書、何を聞き忘れていたというのだね?」

「いえ、些細な疑問なんですけれど、
 どうしてその次期師団長候補のJさんとやらが今日帰ってくるって
 分かったんです?」

レナード 「……本来ならば私宛に届くはずだった匿名の手紙が、
 ボイス元帥のポストに投函されたらしく、
 その手紙を読んで本日帰還予定の事実に気づいたんだそうだ。」

「匿名の手紙?どうしてそれで誰が帰ってくるかわかるんです?」

レナード 「手紙の後ろに『J』と一文字書かれていたからな。
 あんな真似をするのは奴以外に誰もいない。
 そして何よりの手がかりは……。」

「手がかりは?」

レナード 「……ところで秘書。」

「は、はい?」

レナード 「クッキーは好きか?」

「えっと……はぁ、嫌いじゃないですけど???」

レナード 「どんなクッキーが一番好きだ?」

「え?え?
 いえ、あの、
 突然そんなこと聞かれても困るんですけど……。」

レナード 「そうか……ヒントはそこにあると言っておこう。」


すたすたすた


「ってちょっとレナード将軍っ!
 ちゃんと教えて下さいよー。
 気になるじゃないですかぁっっ!」



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▽ 城壁へ行く
▽ 繁華街へ行く



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