Forbidden Palace Library #08 認可なき侵入


王都シルバニア
住宅街

雪も解け、ゆるやかに春の風が舞うこの季節。
住宅街の所々でも花のつぼみがわずかに地面から顔を出し始めている。
それまで耐えてきた長い冬を乗り越え、夏の来ないこの地方でわずかな春の陽気を楽しむかのように。

街のあちこちから、子供達のはしゃぐ声が聞こえてくる。
子供達にとって屋外という絶好の遊び場は、冬だろうと春だろうと関係ないのかもしれない。



「アークライト師団長。」

アーク 「うん、なんだい?」

「もしかして、小さい木の切り株とか持ち歩いていたりしません?」

アーク 「うん持ってるよ。けど、どうしてそんなこと知っているんだい?」

「…………いえ、まぁちょっと。」

アーク 「うん、でも最近はずーっと勘で道を選んでいるから
 使わなくなっちゃったんだけどね。
 あ、そうそう、さっきマルス君に地図貰ったんだ。」

「地図?」

アーク 「うん、これ。
 でもね、何度見ても
 現在地点が僕にはさっぱりで。」


ばさっ


「…………ってアークライト師団長、
 これって地域地図じゃなくて
 世界大陸地図……。」

アーク 「でも地図なんだよね?」

「ってあれ?
 この大陸ってこんな形してましたっけ?
 なんとなく近い気もするけど明らかに違うような……。」

アーク 「うん?」

「いえ、それだけでなく書かれている地名が今の物とほとんど違うんですけど。
 辛うじてアルゲンタイン、フェーゴ、シャイル地方といった古名だけが
 スペル違いで残されているだけのような……。」

アーク 「うん、そう言われればそうかもしれない。」

「あのー、この地図ってもしかして、
 旧文明時代のものだったりしません?
 書かれている年号も今使われている年号と異なっていますし。」

アーク 「そうか、だから道が載っていなかったのか。」

「いや、それ以前に地図のスケールからして間違っていると思うんですが。」

アーク 「うん、そうか、そうだったのか。」

「ってあのー、今まで気が付かなかったんですか?」

アーク 「うん。」

「………………そこで断言されても困るんですけど。」



▽ 中央公園へ行く
▽ 城壁へ行く
▽ 繁華街へ行く

★★



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