「だから俺じゃねぇって10年前から言ってるだろう、ジジイっ!
確かにこっそりチョコチップクッキーに走ったのは認めるけど、
食器棚にしまってあったミルククッキーを食べたのは俺じゃないっ!」
「実の祖父に向かってジジイとは何事だっ!
ジュリアス、だいたいミルククッキーを食べるのは
うちの家でお前以外に誰がいる?」
「だから俺の本当の名前はユリウスだってば!
アークみたいに訛って呼ぶなっ!
だいたいあんたが名付け親だろっ!?」
「いちいちうるさいぞ、ジュリアス!」
「ユ・リ・ウ・ス!」
「よいしょ。 あれ、いつの間にこんなに扉が小さくなったんだろう?」
「アーク、そこ、窓。」
「ってええっ!?
あのー、アークライト師団長?
どうやったら3階の窓から入ってこれるんです?」
「きょろきょろ……さぁ、それが僕にもさっぱり。」
「今更ながらこの人って一体……。」
「ちゃきーん。」
「いえ、別にそこで鳴らす必要はないと思うんですが。」
「それより、ジュリアス兄さん見つかった?」
「ここにいるぞ、俺は。」
「あ、いた。」
「いた、って……隠れんぼじゃないんですから。」
「そういえばジュリアス君の家で、
家に帰ってきた家族の誰かを脅かそうと
隠れんぼしたこともあったっけ。
「あー、あったなー、結局アーク途中で行方不明になっちゃったけど。」
「いつものことだ。」
「その一言で済んでしまうあたりが……。」
「そうそう、
それで食器棚に隠れてたら目の前に美味しそうなミルククッキーがあって、
思わず食べちゃったことが……あれ?みんな、どうしたの?」
「今、何て言いました?」
「うん、だから食器棚の中にあったミルククッキーをぱくっと……。」
「……ひょっとして……アークライト師団長が?」
「…………ほぅ。」
「うん、なんだかよくわかんないけど
雰囲気怖いから後で出直すね。
じゃ、僕はこれで。」
「って、おい!」
「……なんであいつ窓から出ていくんだ?」
「ここ、3階よねぇ……?」
「秘書っ!あいつを追いかけろっ!その窓からっ!」
「ち、ちょっと待って下さいよ!無理ですよそんなのっ!」
「わかった。ならば来年度の有給を全て没収、と。」
「そ、そんなぁぁぁぁああっ!」
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