「だからお前は昔から……」
「そういうジュリアスこそ小さい頃……」
「あ、まだ口論してる。」
「あの、レナード将軍にジュリアス様、
口論なさっていないでとりあえずお茶でも飲まれては如何でしょうか?
先ほど沸かし過ぎたお湯が丁度よくなった頃ですので。」
「……すまないね、アリスお嬢さん。」
「言っておくが、アリスさんに手を出したらただじゃおかないからな。」
「しねぇよ、そんな命知らずなこと。」
(えっ……。
レナード将軍がそんなこと言ってくれるなんて、
嬉しい……。)
(『君に触れていいのは俺だけだ』『レナード将軍……』
『他の誰にも触らせない……』『あ、ダメ、そんなとこ……』
『……いいだろ?』『んっ……。』)
「ってああっ!
アリスお嬢さん、お茶お茶!
こぼれてますっ!」
「え?あ、ああっ、ごめんなさいっ!」
「キ・エシェル・リア 水のかけらよ 凍れ アイス!」
「これでよし。
アリスさん、氷が溶けないうちに
このこぼれた紅茶を流しに運んで下さい。」
「あ、はい。」
「……なるほど、氷の魔導ってそんな便利な使い方があったんですね。」
「こぼれた液体が拡散する前に凍らせてしまえば、
少し薄いがなんとか手で持ち運べるようにはなるからな。
とっさに拭く布がない時とかに役立つぞ。」
「その魔法憶えたての頃って、よく水たまり凍らせて遊んだよなー。
雨上がりの日に公園に出来た水たまりを片っ端から凍らせて、
女の子転ばせて遊んだりとか。」
「……そんなことしてたんですか?」
「秘書、だからそこで逃げる体制に入るな。」
「いえ、やっぱりこの人の側にいるのは危険かなーと。」
「微妙に話が歪められている気がするが、ジュリアス。
わざと転ばせたわけではなく、
後を付いてきたユリアが勢い余って転んでいただけな気がするが。」
「いやー、昔の記憶がちょっと曖昧で。」
「……だからそういう次元の問題じゃないと思うんですが……。」
「一緒にアークも転んでいなかったっけ?」
「いや、それは明らかに記憶違いでアークは転んでいなかったはずだ。
アークは氷の上で何故かぐるぐる何周もしていただけで、
それ以外にはたいしたことなかったはずだ。」
「まぁなんとなくその場面、想像つきますけど、
同じ氷の上を何周もする時点で充分に大した事だと思うんですが……。
っていうかこの人たちって一体…………。」
「そもそもあれはレナードが試し詠唱したいからと…………」
「いや、言い出したのはジュリアスが先に…………」
「あーあ、また口論に戻ってるし。」
★★