Forbidden Palace Library #10 舞え軽やかに


王都シルバニア
城壁

夏のゆるやかな日差しが、城壁の白い輝きをより際だたせる。
日光の直接反射を防ぐために表面加工されているものの、
やはりその眩しさを完全に防ぐことは出来ないようだ。

だがその目映さは、色彩的なものだけではない。
先の大戦を守り抜いた、偉大な城壁への信頼の光なのかもしれない。

その城壁の前で揺れる、一振りの国旗と高枝切りバサミ。



「あ、いた!」

コペルニクス 「ちゃきーん。
 このまま本番当日まで逃げ延びれば
 俺様の華麗なる高枝切りバサミwithスペシャル国旗バージョンが……。」

「そんなスペシャルは必要ありませんっ!」

コペルニクス 「ちゃきーん!」

「うっ、だけどどうやってあれを奪還すれば……。」

マルス 「んんん。
 大きな紙袋を飛ばすように
 あの旗を強風で飛ばすのはどう?」

「え、どうやって強風を!?」

マルス 「んんん、もちろん魔導で。」

コペルニクス 「!?」

マルスウィ・エリス・セルティアス
 突風よ我が目前の障害をなぎ払えっ!
 ウィンドスラッシュ!!!


ごうっ!

ばさばさばさばさっ

コペルニクス 「ちゃっきーん!
 俺様の華麗なる高枝切りバサミwithスペシャル国旗バージョンは、
 その程度の風では飛ばされん!」

「旗はものすごい勢いで後ろに靡いているけど
 本人笑み浮かべながら耐えてるし……。」
(ていうか、その名称で決定なんだ……。)

マルス 「んんん。
 そういやコペ君って結構筋力あるんだっけ。
 そいつは困ったね。」

「そ、そんなぁ!」

コペルニクス 「ちゃきーん。
 秘書。諦めてこの旗は俺様に譲れ。
 俺様が晴れの舞台で軽やかに舞ってやろう。」

「お願いですから、それだけはやめてくださいっ!」

マルス 「んんん。仕方ない。ひとつ上のレベルの魔導にしよう。」

「え?」

マルスウィ・エレリアス・セスティニアス
 強風よ我が目前の障害を吹き飛ばせっ!
 ゲイルスラッシュ!!!


ごぉおおおおおおおおっ!

ばさばさばさばさっ

「わわわっ、飛ばされるっ!」

コペルニクス 「くっ、これごときの風など、風など……!」


ばさばさ、ばさっっ

ひらりっ

コペルニクス 「!」

「あっ! 旗が取れた!」

マルス 「んんん、秘書君、今だっ!!!」


たたたたたたっ

ぱしっ

コペルニクス 「!!! 俺様の華麗なる高枝切りバサミの旗がっ!」

「……ふぅ、なんとか回収できた」

コペルニクス 「くっ! 俺様の、
 俺様の華麗なる高枝切りバサミwithスペシャル国旗バージョン
 舞え軽やかにスタイルが……。」

(そ、そんな正式名称だったのか……。)

マルス 「んんん、
 秘書君、奪還おめでとう。
 ところでその旗をどうするの?」

「えーと、昼までに王立劇団に……届けて……。
 あーっ!
 もう正午過ぎてるっ!!!」

マルス 「んんん、正午過ぎるとだめなのかい?」

「誰でもいいから早く他の師団長捕まえて、王立劇団まで届けて貰わないと……。」

コペルニクス 「……マルス総統。」

マルス 「んんん?」

コペルニクス 「15リルで、
 秘書の身柄確保並びにあの国旗の再奪還を。
 ちゃっきーん!」

マルス 「んんん、了解。
 これで明後日までのご飯には困らないね。
 秘書君、覚悟はいいかい?」

「えええええっ!?
 ち、ちょっと、
 そ、そんなぁああああああっ!!!」



▽ そして、式典当日……



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