「秘書さん、貴方も毎回大変ね。ご苦労様。」
「あ、エリーゼ師団長。ありがとうございますっ。
……今の王立軍って、戦時でもないのに
なんでこんなに忙しいんでしょうか。」
「どこも人材不足なのよ、実際。」
「人材不足?」
「ええ。実戦経験を兼ね備えていて、
五体満足な軍人が今は非常に少ないの。
現場だけでなく、事務面に於いてもそう。」
「エンディルとの戦争が終わって、
多くの兵士達が引退の道を選んだから、
今は新兵達を訓練するので精一杯。」
「そうだったんですか……。」
「まだ若年の私に師団長の職が回ってきたのも、
その煽りの一環よ。
他に適任者がいなかったんですって。」
「でもエリーゼ師団長の場合、
高等学院で優秀な成績を修めたから、
師団長職に抜擢されたって……。」
「あら、ありがとう。
……って私、秘書さんに
そんなこと言ったかしら?」
「あ、いえ。前にそんな話を小耳に挟みまして。」
「……自分で言うのも変だけど、二十代前半で師団長職なんて
本当に前代未聞の話なの。けど、そうせざるを得なかった。
それほどまでに、今の王立軍は人材不足で弱体化しているのよ。」
「そうだったんですか……。」
「あとは、現場の兵士を納得させるだけの就任理由、ってところかしら。」
「理由、ですか。」
「例えば、いくら隠れた才能があっても、
何も成績や実績がない人には誰もついていかないでしょ?
そういう意味でも、説得力というのは大事なのよ。」
「なるほど。そんな事情があったんですね。」
(組織って難しいなぁ……。)
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