「あ、ボイス元帥。」
「秘書か。また何やら駆け回っておるな。」
「……最初この仕事に就いた時、
てっきりデスクワークだと思っていたんだけどなぁ。
なんでロードワークに……。」
「仮にも軍隊だからな。」
「辞書には文官という言葉もあるんですが。
そうだ、丁度お伺いしたいことがあったんです。
個人的な興味本位の話ではあるんですが……。」
「うむ? なんだね?」
「例えば将軍位の人間が城壁守備隊の顧問を兼ねると、
その分だけ賃金が追加されますよね?
じゃあもし2個師団、あるいは3個師団を兼任統率すると……?」
「うむ。センティス公が全軍を統べていた時代は、
確か全3師団分の給料が支払われていたと、
以前何かの資料で読んだ記憶がある。」
「え、全3師団?」
「建国当初は全部で3つの臨時師団しかなかったのだよ。
まだ国家人口も少なく、
守るべき都市も今ほどの数はなかった。」
「へぇ、そうなんですか。」
「秘書、初等学院で習わなかったか?」
「……すいません。記憶にないです。」
「ふむ、そうか。
ならばこれも教えておこう。
王立軍も少し前までは全5師団しかなかったのだ。」
「え、じゃあ第6師団は?」
「近年になって創設されたばかりの新しい師団だ。
そのため、内部編成についても実験的な性質が多く含まれている。
若年のエリーゼが師団長に就けたのもそのためだ。」
「そんな理由があったんですか……。」
「時代が変われば道具も変わる。
道具が変われば戦術も変わる。
戦術が変われば、戦略も変わる。」
「そのための実験師団、ということですか。」
「うむ。」
「……ひょっとして、
アシスト師団長が興味を持っているのって、
そういう理由もあるんじゃ……?」
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