「よぅ、マルス。ちょいと手伝わないか?」
「んんん。どうしたんだい、アシスト君。」
「時給1リルで俺に雇われないか?
なぁに、ちょっとした妨害工作を手伝うだけだ。
そんなに難しい仕事じゃない。」
「んんん、いいのかい、そんなに高給で。」
「……換算すると時給50円。」
「ちっ、秘書いたのか。」
「あのー、争うより話し合いで解決したほうが……。」
「争う?んんん。穏やかな話じゃないね。」
「なぁに、単にダッシュの魔導でちょいとユリアを捕まえるか、
ウィンドスラッシュの魔導あたりで
奴の足止めをしてくれればいいんだ。」
「……その前にアシスト師団長が別の意味で捕まるんじゃ。」
「んんん、力学系の魔導かー。
アシスト君は祖先が風使いの一族だから得意かもしれないけれど、
僕は必ずしもそうではないからね。」
「風使いの一族?」
「俺も初耳なんだが、なんだそれ?」
「んんん。ライト家の遠い祖先は、
パタゴニアの天空軍でパイロットをやっていたみたいだよ。
その頃の原体験が、後の飛翔魔導に繋がったのかもしれないね。」
「パタゴニア? どこだ、それは。
それにそんな話、
一度も聞いたことないぞ。」
「は? 天空……パイロッ……ってなんです、それ?」
「んんん。
大陸が今とはまだ別の形をしていた大昔の話さ。
まだ人類が世界中に栄えていた頃の……ね。」
「へぇ……そうなのか。
って、俺も知らないような話を
どうしてお前が知ってるんだ、マルス?」
「んんん。
それを僕が教えることはできない。
だからアシスト君、キミが自分の力で調べてみるんだ。」
「おい、調べるって、そもそもどうやって……。」
「確か実家は、セリフォスの図書館だったよね?」
「!!!」
「んんん。答えはキミの身近にあるはずだよ。」
「あ、逃げたっ!」
「……マルスのやつ、珍しく真面目な顔してたな。
って、そうだ!
あいつを雇おうとしてたんだった!」
「……ややこしい事にならなくてかえってよかった気が。」
「何か言ったか、秘書?」
「いえ、なにも。」
■