「いらっしゃいませ。……あ。」
「……少し、邪魔する。」
「あ、はい。どうぞ。」
「む?
どうした、コペルニクス。
それに秘書も。」
「あの、城壁守備隊の顧問の件で、
結局ユリア師団長とアシスト師団長を差し置いて
コペルニクス副師団長が先着に……。」
「? 何の話だ?」
「え?」
「ちゃきーん。どういうことだ。」
「え、いえ、あの、確か午前中に
『城壁守備隊の顧問役だけでも、誰か他の師団長に委任したい』
って仰っていましたよね?」
「ああ、その話か。
確かに猫の手も借りたいとは言ったが、
別に本気で委任を考えていたわけではない。」
「え。」
「仮にも将軍である以上、その程度は軽くこなせないでどうする。」
「……じゃあ、今日の騒動は一体。」
「だが、確かに一部業務を委任して、
空いた時間を他に回すのも手ではあるかもしれんな。
よし、コペルニクス。」
「ちゃきーん。」
「城壁守備隊の顧問代理を委任する。」
「ぇええええ!?」
「ちゃきーん!ありがたき幸せ。」
「レナード将軍、本気ですか!?」
「あーっ!やっぱり!
なんで罠が解除されてるのよっ!
近距離接近無差別反応にしておいたのにっ!」
「ん?
コペルニクスが先にいるということは、
もしかして……?」
「……私の発言の何を勘違いしていたのかは知らないが。
結果的には城壁守備隊の顧問代理を
コペルニクスに頼む事になった。」
「ちっ、罠が絡みさえしなければ……っ!」
「残念しょんぼりー。」
「まぁ、ひとまず解決ですね。」
「よし、これで私は空いた時間にアリスさんと……。」
(え、私と!?
もしかしてあんなことこんなこと……だ、だめよっ!
まだ昼間よ、みんな見てるわっ!)
「将軍、ちゃんと仕事してくださいっ!」
「仕事で思いだしたぞ。
そういえば頼んでおいた書類整理は済んだのか、
秘書?」
「え?」
「『とりあえず残りの書類は適当に片づけておいてくれ』と
午前中言っておいたはずだが?
出来たのかね?」
「ああああああっ!」
(……師団長追いかけるのに夢中で、
すっかり忘れてた。)
「それと、追加の仕事だ。
コペルニクスを城壁守備隊顧問代理にするための
申請書類も用意しておいてくれ。」
「え、やっぱりその話、本意なんですかっ?」
「無論だ。夕方までに頼んだぞ。」
「そ、そんなぁあああああっ!」
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