「……戦略研究用の予算配分表がこっちで、
王立軍の武装臨時補充用の緊急予算がこっちか。
それで城壁守備隊の稟議書が――ああ、ややこしい。」
「なんだか大変そうですね。」
「将軍職というのは王立軍以外に、城壁守備隊の顧問も直轄している。
だからどうしても通常の二倍の仕事量をこなさねばならなくなる。
午後からはアリスさんのところに行く予定だというのに。」
「……ひょっとしてそれが最優先事項なんですか?」
「もちろんだ。何か問題が?」
「……ご自分の職業をきちんとご理解されてます?」
「はて、なんだったかな。」
「レナード将軍っ!」
「分かっている。冗談だ。
そんなアークライトではあるまいし、
本分ぐらいは理解しているつもりだ。」
「時間に合わせて行動しようとすればするほど
スケジュールというのは過密になっていくものだ。
まったく秘書の手でも借りたいぐらいだ。」
「秘書の手って、私ちゃんと仕事手伝ってるじゃないですか……。」
「それでも手が足りていないのは見て分かるだろう。」
「まぁ、それはそうですけど。」
「いっそ猫の手でも借りたい。」
「中央公園に可愛いのが一匹いましたけど、連れてきますか?」
「……ああ、それもいいな。」
「え、本気です?」
「まったく、城壁守備隊の顧問役だけでも
誰か他の師団長に委任したいものだ。
そうすれは少しでも手が空くというのに。」
「は、はぁ……。」
「とりあえず残りの書類は適当に片づけておいてくれ。
午後3時にはパン屋ソフトブレッドに戻る。
それまでに頼んだぞ。」
「え、ちょっと、レナード将軍どこに行かれるんですかっ!?」
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