「……グリフィス師団長、家と家の垣間に挟まって何してるんです?」
「おう、ユリアのリング付きネックレスが落ちてないかなと思って探してたんだ。」
「暗いのが苦手なユリア師団長がこんな裏路地を通るとは思えないんですが。」
「そうか、そいつは盲点だった!」
「あと、どうみても壁に挟まっているようにしか見えないんですが。」
「いや、決してそんなことはないぞ!
ちょっと鎧がつっかえてるだけだ。
ほんのちょっとだけだ。」
「じゃあそのままで大丈夫そうですね。
私は向こうを探してみます。
では。」
「あっちょっと待ってくれ、待ってくれー!」
「……それで、抜け出すのを手伝ったほうがいいんです?」
「いやいや、熟考していただけだ。
ユリアの足取り、シルバニアの市街図、
ここから導かれる結論はひとつ!」
「なるほど、答えは?」
「犯人は世の中にいる!」
「…………。」
「どうだ、すごい名推理だろう?」
「『名』じゃなくて『迷』の方ですね。
……そもそも今回の件、
犯人なんかいましたっけ。」
「いやいや案外、王政転覆を狙う共和派結社の仕業かもしれないぞ。」
「それにしては随分と手が込んだわりには効果の薄い策略ですね。」
「そんなことはないぞ。
ユリアはああ見えて天性の素質を備えた魔導師だ。
その行動力を無効化されることは主戦力の喪失に繋がり……」
「……確認しますけど、今回の事件は
単にユリア師団長がリング付きのネックレスを
どこかで落としただけの話ですよね?」
「おう、そうとも言うな。」
「仮に人為的な仕業だとすれば、
どうやって本人に気付かれずにネックレスだけを
こっそり外して奪い取れるというのです?」
「いまそれを考えていたところだ。」
「つまり根拠は?」
「ない。」
「……じゃあ、私は捜索活動に戻りますので、これで。」
「待ってすまん俺が悪かった、ここから引っ張りだしてくれ、おーい秘書ー!」