Forbidden Palace Library #12 夢みよ乙女達


王都シルバニア
大通り




ジェイムス 「よいしょ、どっこらせっ」

「あれ、画家のおじいさん。
 そんなにいくつも荷物を抱えて
 どこに行くんですか?」

ジェイムス 「ん、君か。
 いやなに、借りてた宿屋が手狭になったのと、
 この街が気に入ったのもあってのぉ」

ジェイムス 「近くに部屋を借りることにしたんじゃ。
 それで、荷物やら画材やらを移動しておるんじゃが、
 この街は馬車が使えなくて難儀しとるんじゃ」

「……リヤカーを借りればいいんじゃないですか?」

ジェイムス 「おお。そうか、その手があったか。
 でもあと半分もないんじゃ。
 このまま何とか運んでみようかのぅ。どっこいしょ」

「足腰、痛めないでくださいね」

ジェイムス 「なぁに、まだそこまで歳では……」


グキッ

ジェイムス 「ぐぁっ、こ、腰が……」

「いま言ったばかりじゃないですか!!!
 もうお年なんですから無理しないでください!
 いますぐお医者さんを呼んできますから!」

ジェイムス 「いや、心配には及ばん。
 ちょっとだけ支えていてくれんか。
 なに、すぐ自分で治す……」

「えっ?」

ジェイムス 「ふむ……ここじゃなっ」


ごきっ ぽきっ すこんっ

ジェイムス 「よしよし、これで大丈夫じゃ」

「……え、
 今なにやったんです?
 自分で自分を叩いたようにしか……」

ジェイムス 「なに、人体の構造さえ分かればなんとでもなるものじゃ。
 ……まさか暗殺のために身につけた技術が
 治療にも役立つことになるとはな」

「暗殺?」

ジェイムス 「いやいや、こっちの話だ、気にするでない。
 ……儂も年老いたもんじゃな。
 これからはお前達、若者の時代だ」

「そんなこと言ってると、ますます老けますよ」

ジェイムス 「なに、真実を言ったまでだ。
 もう未来を制限する者もいない。
 人類の本当の歴史が、もういちどはじまるのじゃ」

「???」



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