「奥義・コペルニクス流、乾坤一擲空中楼閣!」
「そんな今適当に考えてくっつけたみたいな
奥義名はどうでもいいですから、
早く猫を下ろしてあげてください!」
「秘書さん!それにコペルニクス君も!」
「あっ、エリーゼ師団長!
猫とネックレス、無事です!
って、あっそういえば足に怪我がどうのって……」
「ほれ」
「見せてみて。
……後ろの右足を、枝か何かで引っかけたみたいね。
これならすぐに出血も止まると思うし、命に別状はなさそうよ」
「ほっ、そうですか。よかった……」
「うむ。全ては俺様の華麗なる、」
「手当とかはどうすればいいんです?」
「とりあえず消毒と包帯は必要でしょうね。
あとはしばらくじっとさせていないと、
また傷口が開いても困るから……」
「治るまでしばらく時間がかかりそうだから、
誰かが保護するしかなさそうね。
でも一緒に王城に――連れていくわけにもいかないわね」
「あ。でしたら私がいったん家に連れて帰りましょうか?」
「この子を?」
「はい。あ、早退許可を頂ければ、ですが。
たぶん今の時間帯なら妹も家にいるはずですし、
父と母も事情を説明すれば、なんとか説得できるんじゃないかと……」
「……わかったわ。
早退の件については私から伝えておくわ。
じゃあ猫の傷の手当てはお願いね、秘書さん」
「はい!」
《……指輪の内側に刻印された名前を手がかりに、
どうにか届けようとしてみたのだけれど……
慣れない余計な事はするもんじゃないわね》
「……?」
《…………》
「あの、エリーゼ師団長、何か言いました?」
「いいえ、別に?どうしたの?」
「いえ、なんでもないです。幻聴かなぁ」
《ま、災い転じて何とやら、かしら。
……リタは……あなたのお母さんは、
立派なママになっているかしら?》
「……え?」