「僕、ケイン=アークライトは、
ユリア=ハーシェルを妻とすることを、
ここに誓います」
「私、ユリア=ハーシェルは、
ケイン=アークライトを夫とすることを、
ここに誓います」
「立会人の皆様、よろしいか。
異議無くば、ここに二人の結婚は成約し、
その命が果てるまで永遠に続くものとする!」
「……ジュリアさん、いえ、ユリアさん」
「アーク……ううん、ケイン。
愛してるわ。
これからも、よろしくね」
「……いいわね、結婚って」
「ああ。全く同感だな」
「……あら、珍しいこと言うのね」
「ん?何がだ?」
「いえ、素直に認めてたから、少し驚いただけよ」
「なぁ、エリーゼ」
「なぁに、ロウクス君?」
「ちょっと目を瞑っててくれないか?
そう。
そのまま左手を出して」
「え?……こ、こう?」
「…………」
「えっ!?」
「…………」
「あ、あの、このリング……」
「おまえの人生、今度こそ、必ず幸せで満たしてみせる」
「!」
「もう実験台だとか変な口実は使わない。
今にして思えば、俺はずっと面影を追い続けていたんだと思う。
それはこの世界で俺だけが知ってて、もう俺しか知らない事だったから」
「だけど、気づいたんだ。
例え俺が記憶喪失でも、今までの知識や経験を全て失っていたとしても、
おまえに惚れていたんだろうなって」
「ロウクス君……」
「エリーゼ」
「……本当に、私でいいの?」
「ああ。お前じゃなきゃダメなんだ」
「本当に?」
「ああ」
「……本当の、本当に?」
「ああ」
「私ね……小さい頃からずっと毎晩、悪夢を見ていたの」
「悪夢?」
「声も憶えていない。顔も分からない。だけど愛していた人が、
目の前で風に流される灰のように消え去ってしまう夢。
意味も分からず、ずっと毎晩泣いていたの」
「…………」
「その知らない誰かを守りたくて、
二度と失いたくなくて、
私、ひたすら強くなったの」
「……エリーゼ……」
「だから、ロウクス君。
これからは、私に貴方を守らせて。
もう二度と、悪夢を見ないためにも」
「……ありがとう、エリーゼ。愛してる」
「私もよ、ロウクス君」
「……もう二度と、
お前に悪夢を見せたりなんかしない。
ずっと離さない。大丈夫だ」
「ええ、分かってるわ。
これは悪夢なんかじゃない。
だって、こんなにキスが甘いんですもの」