「え、王城に立ち入り禁止……って、どういうことですか!?」
「先刻、王立軍の名の下に戒厳が発令され、
全ての城門は封鎖されている。
帰れ帰れ。」
「ちょ、ちょっとまってください。
あの、戒厳令って、いったい誰が発令を?
何が起こっているんです?」
「…………。」
「あの、私も王立軍に所属していて、
えっと軍人ではなく軍属ですが、
事務官のダリア――」
「……知っている。」
だから忠告しているのだ。
余計な事に首を突っ込まないほうがいい。」
「――おや、
こんな時間に門が閉じたままとは珍しいですね。
なにかトラブルでもありました?」
「えっと、それが──」
「繰り返す。
いまは『誰で』あろうとも、
ここを通すわけにはいかない。」
「……それは貴方の上官からの命令、ということですか?」
「そういうことだ。
……いま、この先へ踏み込めば命の危険があります。
どうか、すぐにここから立ち去ってください。」
「!? それはどういう……」
「なるほど。軍人にとって命令は絶対ですからね。
……たしか、貴方は王立軍の秘書さんでしたね。
ここは一度退きませんか?」
「えっ?」
「少々ご相談したいことがあるのです。
貴方も私も立場は違えど、上と連絡を取りたいはずです。
そういった意味では利害が一致すると思うのです。」
「確かにそうですね、このままでは仕事になりませんし……。」
「では、そこの紅茶屋さんで作戦会議といきましょう。」
「わかりました。そういうことでしたら──」