「ああ、美味しい。やはり紅茶はレプトン社に限りますね。」
「……前から思っていたんですけど、
その名称、大丈夫なんですか?
色々な意味で。」
「ギリギリセーフです。」
「本当に……?」
「それはともかく、
私たちの置かれている状況を
整理してみましょう。」
「はい。」
「正式な発令時刻は不明ながら、王城は封鎖。
ここまで戻りながら住宅街の様子を窺ってみましたが、
いつもより多くの歩哨が配置されていました。」
「……この短時間によくそこまで気付きましたね。」
「紋章院の仕事には、そういった調査も含まれていますからね。」
「あれ。そういえば、お名前まだ聞いていないような気がします。」
「ああ、これは失礼。
所属は紋章院、名前は――バート、と呼んでください。
貴方は王立軍の秘書官のダリアさんですよね。」
「はい。そうです。
以後お見知り置きを──って、
……なんで知ってるんです?」
「いつもお城の中を駆け回っているのを見ていましたので。」
「そうなんですよ、ボイス宰相もレナード将軍も人使いが荒くて……」
「確かに、王立軍は昔から個性的な人が多いですからね。」
「って、そうじゃなくて、
王城に入れないのであれば、
誰か他の師団長に連絡を取らないと──」
「どなたかの居場所に心当たりはありますか?」
「アシスト師団長とエリーゼ師団長なら、
確か新しい新居に……あっ!
もしかして、さっきの住宅街の歩哨って――」
「……既に監視網が敷かれている、
もしくは軟禁状態に置かれている、
という可能性はありますね。」
「ユリア師団長とアークライト師団長は新婚旅行中だし、
グリフィス師団長は辞表を置いてどこかへ行っちゃったし。
あとは……」
「残るはレナードさん、あるいはコペルニクスさんというわけですか。」
「おや?」
「──よかった。ここに居たんですね、ダリアさん。」
「アリスさん!」
「どうやら、情報源が来てくれたようですね。」