「……あの、そちらのかたは?」
「ああ、僕は――バート。紋章院に所属しています。
このダリアさんと同じく王城から追い払われた立場です。
少なくとも、敵ではないと思いますよ。」
「はい。この人は大丈夫だと思います、たぶん。」
「……わかりました。その言葉を信じます。
先刻──レナードさんが家を出てすぐに、
王立軍に身柄を拘束されました……。」
「えっ、王立軍に!?」
「それで、どちらの方角へ?」
「おそらく城壁に向かったのだと思います。
私も急いで玄関へと向かったのですが――
このような走り書きのメモが。」
「えっと……
『今はダメだ。秘書と合流しろ』
これは間違いなく、レナード将軍の筆跡ですね。」
「ふむ。彼は『敵』に心当たりがあるようですね。
大勢には敵わないと判断したか、
あるいは大切な人を守るためにわざと捕まったか……」
「私、もうこれ以上、
家族を、愛する者を、失いたくないんです!!!
先の大戦の、ブランドブレイでの悲しみを、二度と──!」
「アリスさん、落ち着いて!」
「大丈夫ですよ。
レナードさんの聡明さは信頼に値します。
実際、こうして合流できたわけですから。」
「……そうですね。取り乱して失礼いたしました。」
「あっ、そういえば弟さんは?」
「デニス、でておいで。」
「なんだかよく分からないうちに
連れてこられちゃったけど、
ぼ、ぼくも力になれるかな……」
「ええ、とても頼もしい援軍です。
とはいえ、同じ場所に長居し続けるのも危ないかもしれませんね。
レナードさんの居場所が分かったところで、偵察と行きましょうか。」