Forbidden Palace Library #12 夢みよ乙女達


王都シルバニア
城壁から少し離れた物陰




バート 「どうやら検問所が閉ざされているだけでなく、
 いつもより多くの兵士が動員されているようですね。
 通行できなくなった市民達も遠巻きに見ているだけのようですが……。」

ダリア 「うーん……いませんね……」

バート 「どうかしましたか、ダリアさん?」

ダリア 「いえ、いつもならこういう時にあの人が現れるんですが……」

バート 「あの人?」

コペルニクス 「誰の事だ?」

デニス 「ひっ!」

ダリア 「うわっ、出たっ!いつからそこに?」

コペルニクス 「いましがた。
 屋根の上から隠れて城壁の様子を見ていたのだが、
 よく見かける顔と珍しい顔がセットで近づいてきたのでな」

ダリア 「……高枝切りバサミを縮めながら降りてこないでくださいよ。」

デニス 「すごい、器用なんだね!」

ダリア 「器用って言うのかなあ、コレ」

バート 「ジェラードさん。
 貴方が敢えて王城に近づいていないということは、
 既にある程度の状況は把握していそうですね?」

コペルニクス 「! これは――」

バート 「ああ、今は緊急事態ですからお気になさらず。
 ひとまず分かっている範囲で構いませんので、
 こちらの状況を教えていただけませんか?」

コペルニクス 「戒厳令が出たようだな。
 指揮系統も市民軍による城壁守備隊に代わり、
 今は第三師団の管理下にある。」

バート 「なるほど。
 『敵』はユリアさんの指揮権を
 何らかの方法で奪取したようですね。」

コペルニクス 「俺様が来たときには既にこの有様だ。
 こっちの第二師団は半数が訓練のため遠征中、
 残りは待機中のはずだが連絡が取れない。」

バート 「……まだ推測の段階ですが、
 どうやらこれは偶発的な事件ではなく、
 裏に相当大きな計画がありそうですね。」

デニス 「レナードお兄ちゃん、大丈夫かなぁ……。」

アリス 「あの、ここにレナードさんは来ていませんか?」

コペルニクス 「いるはずだぞ。
 さっき第一師団の鎧を着た連中に囲まれて、
 城壁の内側へと入っていった。」

アリス 「!!!」

バート 「ケインさんの師団も、乗っ取られたというわけですか。」

アリス 「連れ去られた先に、心当たりは!?」

コペルニクス 「城壁の地下には、主に密輸犯を対象とした留置所がある。
 幽閉が目的であれば、おそらくそこだろう。
 なにせ魔導金属が地下まで伸びている。掘ったところで脱出はできない。」

アリス 「何か、方法はないのですか!!!」

コペルニクス 「落ち着け、アリス嬢。
 多勢に無勢という言葉もある。
 まずは正面以外の突破口を探すのが先決だ。」

アリス 「……はい……その通り、ですね……」

デニス 「ねぇねぇ、ひみつの脱出路とかはないのかなぁ?」

ダリア 「うーん。
 そういう通路があれば早いと思うんだけど、
 流石にそんな都合の良い話は――」

コペルニクス 「地下通路か。
 直接は繋がってはいないが、
 かなり近くまでは行けるかもしれん。」

ダリア 「えええええ!?」



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