「あの、城壁への地下通路っていう話でしたよね。」
「そうだ。何か問題が?」
「どうして裏路地に来たんです?」
「あっ、ここ知ってる!
ゴミ箱に隠れてる人がいるところだ!
最近見掛けないけど……」
「デニス、そういう人に近づいてはいけません。」
「マルス総統は──
この場所を俺に託して次の地へと旅立った。
まだ整理半ばであるが、役立つ日がこれほど早くに来ようとは。」
「二人で一体なにをやっていたんですか?」
「それはいまから分かる……ん?
おい、貴様!
そのゴミ箱で何をしている!」
「む、拙者でござるか?」
「あれ、グラン大使。」
「ああ、カイザリア帝国大使館の。」
「ここで何をしていた。
答えろ。
理由如何では、この高枝切りバサミが鳴るぞ。」
「もう鳴らしているじゃないですか。」
「カイザリアから来た『エリック=ハミルトン』なる者の行方を追って、
この裏路地の、この地点へと辿り着いた――と申し上げれば、
ご理解なされるか?」
「エリック=ハミルトン……?」
「……そういうことか。わかった。入れ。」
「え、入れって、どこに?」
「ゴミ箱?」
「そんなところに入り口があるわけ──」
「あるぞ。この床材を外し、更にその下の石畳を……」
「えええええ!?」