Forbidden Palace Library #12 夢みよ乙女達


王都シルバニア
アシスト邸 地下室付近




バート 「では、ここの石壁を壊させていただきましょう。」

ダリア 「はい。」

バート 「なるべく元に戻しやすいほうが望ましいでしょうから、
 切れ目は垂直に入れたほうがいいですかね。
 少し離れていてください。」

ダリア 「あっ、はい。」

バート――――ライトニングレイ。


ピシッ

ダリア 「えっ、無詠唱!?」

バート 「先祖代々、遺伝的に素養があるようなのです。
 その代償といいますか、あるいは反動といいますか、
 すぐに睡魔に襲われてしまうのですが……。」

エリーゼ 「止まりなさい!そこまでよ!」

アシスト 「動くな!
 武器を捨てて両手を挙げろ!
 こちらは減圧魔導の詠唱準備を完了している!」

ダリア 「ま、待ってください!私です!私!」

アシスト 「なんだ、秘書か。
 もうひとりいるようだが、そいつは誰だ?
 敵なら済まんがお前ごと巻き込んで――」

バート 「ああ、敵意はありません。
 ですが、その明かりは少し遠ざけていただけませんか。
 まだ目が慣れていないのです。」

エリーゼ 「!」

アシスト 「これは――」

バート 「挨拶は抜きにしましょう。
 いまはそんな時間も惜しいのです。
 ひとまずお二人とも、ご無事なんですね?」

エリーゼ 「無事……と言えば無事ですが、家の周囲は包囲されています。
 しかし王都の状況が分からない以上、
 交戦は避けるべきと考えた末、ロウクスくんが――」

アシスト 「そういえば空洞音のある地下室があったな、
 と思い出してな。来てみたら、
 ちょうど何者かが壁を壊して現れたところだ。」

バート 「では、タイミングはよかったわけですね。」

ダリア 「……何か巻き込まれそうな雰囲気があったんですが?」

アシスト 「気のせいだ、気のせい。」

バート 「それでウィルバーさん、エリーゼさん。
 ひとまずここを脱出して合流を願いたいのですが、
 ご同意いただけますか?」

エリーゼ 「この穴は……どこへ通じているの?」

ダリア 「えっと、マルス前師団長の秘密基地だそうです。」

アシスト 「……あいつ、裏で何やってたんだ?」



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