「……なんだなんだ、藪から棒に猫なんか連れてきて。」
「あら、確かその子、
このあいだ中央公園で怪我して、
秘書さんの家で飼うことになった猫よね。」
「リル、アシスト師団長と話せる?」
《えー。男はあんまり好きじゃないのよねー。》
「何をブツブツ言っているんだ?」
「アシスト師団長、ちょっとこの子を──」
「おい、待ってくれ、
俺は今まで動物なんか飼ったことないから、
どうやって持ったらいいのか……」
《はぁ。別に適当でいいわよ。
どうせ触れなきゃ意思疎通できないんだから。
そのかわり、あとでダリアにはたくさん撫でてもらうわ。》
「!? しゃべった?」
「……ロウクスくん?どうしたの?」
「もしかして俺にしか聞こえてないのか?」
《そうよ。これは念話。
あなたは魔導の心得がそこそこありそうだから、
それ以上は説明しなくても意味が伝わるわよね?》
「ああ……理論上は実現できるとは思っていたが、
既に先駆者がいたとは……それにしても、
おい、猫、いやお前は、何者なんだ?」
《詳しい話は後よ。
今は一刻を急ぐんでしょう?
とりあえず魔導金属の城壁を一瞬で破壊したいのね?》
「ああ、そうだ。」
《いまから結合分解の魔導方程式をそのままイメージで伝えるわ。
一度しか教えないから、しっかり記憶してね。
じゃあ、いくわよ──》
「な、なんだ、この頭の中に流れて来る膨大な誘導式は!?」
「猫の手って、本当に借りれたんだ……。」