「ロウクス君、頭を抱えて大丈夫?」
「あ、ああ……。
頭の中にもの凄い情報量が流れて来たせいで、
かなり目眩でくらくらしてはいるが──」
《この程度でだっらしないのねー。
私は教わったときに一瞬で理解して応用までこぎ着けたわよ。
ま、でも若造にしては、才能はあるんじゃない?》
「なんとなくお前の正体が分かった気がする。
まさか魔導金属の発明者か、猫の身体に入っていたとはな。
……ん?教わった?誰からだ?」
《……ああ、なるほど、そういうことね。
数年前にあの男を倒したの、あなただったの。
前言撤回。なかなかやるじゃない。》
「……えっと、終わりましたか?」
《伝えることは伝えたわ。
成功するか失敗するかは知らないけど、
私にできることはこれで全部よ》
「ありがとう、リル。」
《ところで、私にできることはもうないのだけれど、
そろそろお家で毛繕いに戻ってもいいかしら?
ご覧の通り、身体は猫ですもの。》
「なぁ、そいつは魔導詠唱とかできないのか?」
《無理よ。
この肉球で魔導なんてどうやって発動させるのよ?
二足歩行しようとするだけで身体が痛くなるのよ。》
「……デニスくん」
「うん?」
「うちの猫と一緒に、私の家で待機していてくれる?
私の両親──は取り込んでて当てにならないかもだけど、
妹が家にいるはずだから。」
「そうだな、それがいい。
ここから先は本格的な戦闘になる可能性が高い。
子供を守りながら戦える余裕があるとは限らん。」
「で、でもぼく、おねーちゃんのお家がどこにあるのか……」
《私が道案内する。
見付からないようにこの子を誘導するぐらいなら、
猫の身体でもできるわ。》
「……え?」
《ま、男の子ならまだ可愛いのよねー。
じゃあこのまま行くわよ。方向を指示するから、
そのまま言われた通りに進んで。》
「ね、猫が喋った!?」
《……ねぇ、またそこから説明しなきゃダメなの?以下略でいい?》