「さて、全員揃ったようだね。」
「ちゃきーん。」
「だから高枝切りバサミで返事をしないでください。」
「――ここに集まった師団長は三名。
本来、レナード将軍が職務遂行不能となった場合には
ケインさんが副将軍として指揮を執るべきなのだが……。」
「新婚旅行で不在。」
「そしてグリフィス前師団長の後任は未決定。」
「救国評議会とやらは、このタイミングを狙ってきたわけね。」
「そういうことでしょうね。
本来、私にその権限は持たされていないのですが――
考えがあるので聞いていただけませんでしょうか。」
「はい。」
「仰せのままに。」
「ありがとうございます。
まず、ジェラードさんは表から堂々と城壁に向かって、
なるべく注目を集めながら時間を稼いで下さい。」
「ちゃきーん。」
「その隙にウィルバーさんが城壁の地下部分を破壊。
エリーゼさんとアリスさんがその隙間から突入し、
レナードさんを救出する。」
「おそらくさっきの猫から教わった魔導は
相当な精神力を消費する。
その後の戦力は期待しないでもらったほうが正直助かる。」
「大丈夫よ、任せて。」
「レナードさんは、助け出してみせます!」
「逮捕されていたはずの将軍が姿を現せば、
戒厳令の信憑性は失われ、
コントロールは奪還できるものと考えます。」
「異議なし。」
「救出の迅速さが要となる作戦でござるな。」
「グラン大使。
あなたにはカイザリア以外の各国大使館への
不干渉・不介入の連絡をお願いしたい。」
「承知した。」
「そしてダリアさん。」
「あっ、はい。」
「一緒に王城まで付いてきてください。
ボイスさんの所在と真意が分からない以上、
直接レミィティアーナ陛下に接触したいのです。」
「わかりました。でも、どうやって王城に?」
「隠し通路があるのです。
シェルザワード王家の者だけが知る、秘密のルートが。
ただ……ひとつだけ問題がありまして。」
「問題?」
「私達のいるこのエリアと、王城へと至るエリアの間には
地下隔壁が存在しています。つまり、
どこかで一度地上へ出る必要があるのです。」
「……もしもその最中に、職務質問にあったら?」
「そうならないことを望みたいですね。」
「でしたら、仲睦まじい恋人同士のふりをすれば
よいのではないでしょうか?
きっと周りも見て見ぬ振りをしてくれるはずです!」
「…………え?」