「!!!
ここは……作戦会議室?
こんなところに隠し扉があったなんて。」
「――ああ、俺も知らなかったよ。
いや、たったいま知ったというべきか。
だが、少しばかり遅かったようだな。」
「どうして……ユリウスさんが、ここに?」
「最初からいたさ。彼女と共に。」
「待って、そのひとには手を出さないであげて。」
「わかってる。」
「レミィ陛下!!!」
「なるほど。ようやく全ての謎が解けました。」
「謎?」
「この王国が共和制になったとして、
誰がもっとも利を得るか。
そのことをずっと考えていたのです。」
「それはもっとも純粋な動機にして、
どれだけお金を積んでも買えないもの。
つまりは、女王陛下を手に入れようとしていたのですね。」
「ご明察。
だが止めようとすれば――
このじーさんのようになるぞ。」
「!!!」
「ぐっ……」
「ボイス宰相!!!」
「まだ息はある。全てが終わるまで、
レナード同様に監禁しておくつもりだったが、
予想外に抵抗されたのでな。これも不可抗力だ。」
「まさか……ユリウスさんが?
えっ、実の祖父、ですよね……?
いったい、どうして、なにが……。」
「――まさか、お前が黒幕だったとはな。」
「レナード将軍!無事だったんですね!」
「どうしても直接聞きたいことがある。
お前が、本当に救国委員会――共和派のリーダーなのか?
あの日からずっと、国家転覆のために動いていたのか?」
「……ああ、そうさ。
正直、俺にとって政治など、どうでもいい。
だが王制のままある限り、彼女は永遠に手に入らない。」
「十年前、俺は女王陛下の婚約相手候補として推挙された。
その時点でキャロリーネとは既に恋仲だったから、
あとは彼女が諾と言えばそれで何も問題はなかった。」
「だが、調査の過程で
ハーシェル家の系図に不自然な改竄が発見された。
秘密裏に処理されたはずのハーシェル兄弟事件。」
「じーさんは軍の実権を握り続け、
過去の不祥事が表沙汰になることを避けてきた。
だが、当時を知っている者がいる限り、歴史を消すことはできない。」
「……彼と永遠に結ばれないまま、
生きた屍としてこの国を背負い続けるよりも、
私は一人の女性として、愛する者と共に生きてゆきたいのです。」
「レミィ陛下……。」
「そして、彼が血塗られた道を往くのであれば、
私も同じ道を共に参りましょう。
もう、離れません。」
「決意は固いということですか、陛下。」
「はい。」
「そういうわけだ。
本日を以て、レミィティアーナ陛下は行方不明になる。
あとは残った連中が好きにすればいい。」
「いま……この王国には……王位継承者が存在しない。
この意味が……わかるか、ジュリアス。
内乱となれば……多大な犠牲がでるのだぞ……!」
「その犠牲を、彼女ひとりが代わりに背負えというのか!」
「ボイス宰相!」
「構わん……いまは、こやつを止めねば……」
「――そうだね。
確かに、勝手に背負わされたほうは、
たまったものではない。」
「!」