Forbidden Palace Library #12 夢みよ乙女達


王都シルバニア
王城3階 作戦会議室





ガコン

ギギギギギ

ダリア 「!!!
 ここは……作戦会議室?
 こんなところに隠し扉があったなんて。」

ユリウス 「――ああ、俺も知らなかったよ。
 いや、たったいま知ったというべきか。
 だが、少しばかり遅かったようだな。」

ダリア 「どうして……ユリウスさんが、ここに?」

ユリウス 「最初からいたさ。彼女と共に。」

レミィティアーナ 「待って、そのひとには手を出さないであげて。」

ユリウス 「わかってる。」

ダリア 「レミィ陛下!!!」

バート 「なるほど。ようやく全ての謎が解けました。」

ダリア 「謎?」

バート 「この王国が共和制になったとして、
 誰がもっとも利を得るか。
 そのことをずっと考えていたのです。」

バート 「それはもっとも純粋な動機にして、
 どれだけお金を積んでも買えないもの。
 つまりは、女王陛下を手に入れようとしていたのですね。」

ユリウス 「ご明察。
 だが止めようとすれば――
 このじーさんのようになるぞ。」


ゴロン

ダリア 「!!!」

ボイス 「ぐっ……」

ダリア 「ボイス宰相!!!」

ユリウス 「まだ息はある。全てが終わるまで、
 レナード同様に監禁しておくつもりだったが、
 予想外に抵抗されたのでな。これも不可抗力だ。」

ダリア 「まさか……ユリウスさんが?
 えっ、実の祖父、ですよね……?
 いったい、どうして、なにが……。」


コツン コツン コツン

レナード 「――まさか、お前が黒幕だったとはな。」

ダリア 「レナード将軍!無事だったんですね!」

レナード 「どうしても直接聞きたいことがある。
 お前が、本当に救国委員会――共和派のリーダーなのか?
 あの日からずっと、国家転覆のために動いていたのか?」

ユリウス 「……ああ、そうさ。
 正直、俺にとって政治など、どうでもいい。
 だが王制のままある限り、彼女は永遠に手に入らない。」

ユリウス 「十年前、俺は女王陛下の婚約相手候補として推挙された。
 その時点でキャロリーネとは既に恋仲だったから、
 あとは彼女が諾と言えばそれで何も問題はなかった。」

ユリウス 「だが、調査の過程で
 ハーシェル家の系図に不自然な改竄が発見された。
 秘密裏に処理されたはずのハーシェル兄弟事件。」

ユリウス 「じーさんは軍の実権を握り続け、
 過去の不祥事が表沙汰になることを避けてきた。
 だが、当時を知っている者がいる限り、歴史を消すことはできない。」

レミィティアーナ 「……彼と永遠に結ばれないまま、
 生きた屍としてこの国を背負い続けるよりも、
 私は一人の女性として、愛する者と共に生きてゆきたいのです。」

ダリア 「レミィ陛下……。」

レミィティアーナ 「そして、彼が血塗られた道を往くのであれば、
 私も同じ道を共に参りましょう。
 もう、離れません。」

レナード 「決意は固いということですか、陛下。」

レミィティアーナ 「はい。」

ユリウス 「そういうわけだ。
 本日を以て、レミィティアーナ陛下は行方不明になる。
 あとは残った連中が好きにすればいい。」

ボイス 「いま……この王国には……王位継承者が存在しない。
 この意味が……わかるか、ジュリアス。
 内乱となれば……多大な犠牲がでるのだぞ……!」

ユリウス 「その犠牲を、彼女ひとりが代わりに背負えというのか!」

ダリア 「ボイス宰相!」

ボイス 「構わん……いまは、こやつを止めねば……」

バート 「――そうだね。
 確かに、勝手に背負わされたほうは、
 たまったものではない。」

レミィティアーナ 「!」



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