Forbidden Palace Library #12 夢みよ乙女達


王都シルバニア
王城3階 作戦会議室




バート 「――そうですね。
 確かに、勝手に背負わされたほうは、
 たまったものではありません。」

レミィティアーナ 「!」

バート 「しかし継承者不在のままでは、
 また他の誰かが無理に背負わされる。
 同じ宿命が繰り返されるだけです。」

ユリウス 「だったら、市民が等しく責任を背負えばいい。
 そのための共和制だ。あとのお膳立ては
 商業ギルドの連中が上手くやってくれるさ。」

レナード 「それが、お前の背後にいる者達か!」

バート 「……どうやら、肝心なことを知らされていないようですね。」

ユリウス 「肝心なこと?」

レミィティアーナ 「…………。」

バート 「シェルザワード王家の使命は、国民の統治だけではありません。
 都市の地下に眠る、かつての火星植民船の維持。
 これには遺伝子による認証が必要なのです。」

ダリア 「火星……植民船?」

バート 「――大陸歴よりも以前、まだ西暦が用いられていた時代。
 過去最大規模の世界大戦の果てに、
 海は荒れ狂い、大地は引き裂かれ――」

バート 「光速の壁を突破せんとした空間湾曲計画の失敗が、
 文明に終焉をもたらせた。結果として、
 人類生存可能領域は、この南米大陸わずか一部となった。」

バート 「火星を目指すはずだった植民船ラファエル号──。
 四号船となる予定だった方舟は、分裂しながら南米大陸の各地に落下。
 残骸となったユニットは、本来の目的地外である地球上にて起動を開始。」

バート 「それからわずか数十年。テラフォーミングシステムにより、
 荒野には苔が覆い茂り、土壌を生み出し、急速に森林へと成長した。
 そう、ここシルバニア(森林)のようにね。」

ユリウス 「王家は、そのシステム管理者だというのか……?」

バート 「そういうことになります。
 もっとも、そのために膨大な理力を有しているとはいえ、
 副作用で突然眠ってしまうという欠点もありますが。」

ダリア 「……もしかして、あの時の無詠唱の魔導も?」

バート 「ええ。そういうことです。
 とはいえ、二人の仲を引き裂くのは忍びない。ですから――
 私は別の手法で、シェルザワードの血を残そうと思います。」

レナード 「エセルベルト殿下、いったいなにを!?」

ダリア 「エセルベルト?」

バート 「……そろそろダリアさんには
 フルネームを明かさなければならないようですね。
 もう少し、この立場を楽しみたかったのですが。」


ふぁさっ

エセルベルト 「――我が名は、
 グレイフュル=エセルベルト=フォン・ブラウン。
 レミィティアーナ女王陛下の再従姉弟にして、王位請求者!」

ダリア 「……はい?」

エセルベルト 「現行法上は王位継承権を有していないが、
 同じくシェルザワード王家の血を引く者として、
 ここに請求権を主張するものである。」

ダリア 「……え?」

エセルベルト 「つまり、
 いまからこの二人に対して、
 カウンタークーデターを起こすということです。」

ダリア 「えええええ!?」



▽ …………。

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