Forbidden Palace Library #12 夢みよ乙女達


王都シルバニア
王城




侍従長デニス 「ダリア王妃!
 貴方がそんなことをなさらなくてもよろしいのです!
 仮にも一国の王の妻なのですよ?」

王妃ダリア 「えー、そんなこと言われても、
 つい体が動いてしまうんです。
 忙しいのに慣れているというか恋しいというか。」

侍従長デニス 「ダメです。事務仕事なんかしないでください。」

王妃ダリア 「……じゃあ書類整理だけでも。」

侍従長デニス 「ダメです。」

王妃ダリア 「しくしくしく。」

侍従長デニス 「普通はですね、
 自分から進んで事務やりたがる王妃などいません。
 それに、聞きましたよ。」

王妃ダリア 「ぎくっ。」

侍従長デニス 「この間も普段着に着替えて、
 紋章院の職員のふりをして
 仕事してたそうじゃないですか。」

王妃ダリア 「うっ……バレてたんですね……。」

侍従長デニス 「あのてきぱきと働く新人は一体誰だと
 長官に尋ねられて見に行ってみれば、
 ダリア王妃その人ではないですか。」

王妃ダリア 「一応、髪型変えて分からないようにしたんだけどなぁ」

侍従長デニス 「ええ、わかりませんでしたとも!
 父親譲りの変装術を駆使していたとは!
 名札に書かれていたラグランジュという旧姓を見るまでは!」

王妃ダリア 「…………。
 ママの旧姓のトリチェリーにしておいた方が、
 バレないで済んだかな……。」

侍従長デニス 「そういう問題ではありません!
 まさかその場で正体を明かすわけにもいかず、
 取り繕うのにどれだけ苦労したことか!」

王妃ダリア 「……そんなこと言われても、
 ちょっと気になる人と付き合ったら、
 たまたま王妃になっちゃっただけで……。」

侍従長デニス 「とにかく、ご自身の今の立場をよくお考え下さい!」

王妃ダリア 「はいはい。」

侍従長デニス 「……そろそろ将軍がお見えになる頃です、
 あのお方も交えて一度きっちりとお話をいたしましょう。
 シルバニア王国の将来のためにも。」

王妃ダリア 「えっ」


ちゃきーん

王妃ダリア 「まって」


ちゃきーん ちゃきーん

侍従長デニス 「ああ、ちょうど時間通りに到着されたようですね。」

王妃ダリア 「まって。まって、まって」

侍従長デニス 「コペルニクス将軍、お入り下さい!」

王妃ダリア 「まってーーーーー!!!」



お・し・ま・い。




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