「ダリア王妃!
貴方がそんなことをなさらなくてもよろしいのです!
仮にも一国の王の妻なのですよ?」
「えー、そんなこと言われても、
つい体が動いてしまうんです。
忙しいのに慣れているというか恋しいというか。」
「ダメです。事務仕事なんかしないでください。」
「……じゃあ書類整理だけでも。」
「ダメです。」
「しくしくしく。」
「普通はですね、
自分から進んで事務やりたがる王妃などいません。
それに、聞きましたよ。」
「ぎくっ。」
「この間も普段着に着替えて、
紋章院の職員のふりをして
仕事してたそうじゃないですか。」
「うっ……バレてたんですね……。」
「あのてきぱきと働く新人は一体誰だと
長官に尋ねられて見に行ってみれば、
ダリア王妃その人ではないですか。」
「一応、髪型変えて分からないようにしたんだけどなぁ」
「ええ、わかりませんでしたとも!
父親譲りの変装術を駆使していたとは!
名札に書かれていたラグランジュという旧姓を見るまでは!」
「…………。
ママの旧姓のトリチェリーにしておいた方が、
バレないで済んだかな……。」
「そういう問題ではありません!
まさかその場で正体を明かすわけにもいかず、
取り繕うのにどれだけ苦労したことか!」
「……そんなこと言われても、
ちょっと気になる人と付き合ったら、
たまたま王妃になっちゃっただけで……。」
「とにかく、ご自身の今の立場をよくお考え下さい!」
「はいはい。」
「……そろそろ将軍がお見えになる頃です、
あのお方も交えて一度きっちりとお話をいたしましょう。
シルバニア王国の将来のためにも。」
「えっ」
「まって」
「ああ、ちょうど時間通りに到着されたようですね。」
「まって。まって、まって」
「コペルニクス将軍、お入り下さい!」
「まってーーーーー!!!」