『想いの交錯するお店』 Forbidden Palace Library::

ディラック商店



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ディラック商店

マティルダ 「スマイル0リルって言えば、
 飲めば誰でも笑い出すっていうちょっとおかしなワインなら
 前のお店に置いてあったんだけど……。」

グリフィス 「ちょっとどころじゃねえだろ、そのワイン。
 そんな物騒なもの置きっぱなしにしとくなよ。
 なぁ、そういや前の店はどうしたんだ? 売ったのか?」

マティルダ 「売らないわよ。大事なお店だもの。
 けど今は倉庫になってるわ。
 だって商品捨てるわけにはいかないでしょ?」

グリフィス 「倉庫にしないで支店として営業すればいいじゃねぇか。」

マティルダ 「そうしたいのはやまやまなんだけど、この大陸では
 株式は賭事の一種とみなされて禁止されているから、
 一族経営でもない限り本店支店を作りにくいのよ。」

グリフィス 「そうなのか?」

マティルダ 「でも確かにその株式賭博禁止法によって
 貧富の格差が格段に小さくなったのは事実よね。
 商売人としては少し虚しさもあるけれど。」

グリフィス 「ふーん……俺はあんまり商売のことわからないんだけどさ」

マティルダ 「でしょうね。」

グリフィス 「……今、何か口挟まなかったか?」

マティルダ 「気のせいよ。虚しい幻聴じゃない?
 そういえばグリちゃん、禁呪を覚えたいって言ってたわよね?
 実はいい本が……。」

グリフィス 「それで思い出したぞ、マティルダ。
 だいぶ前に買った『3日でわかる禁呪魔導』、
 あれ内容インチキだったぞ!」

マティルダ 「あら、今頃気づいたの?」

グリフィス 「ってわかってて売りつけたんかぁぁぁぁぁっ!!!」

マティルダ 「だってあの本、
 ブランドブレイにいたころから誰も買おうとしなかったのよ。
 在庫処分ぐらいしたくなるじゃない。」

グリフィス 「俺で在庫処分するなぁああああっ!!!」

マティルダ 「お詫びにもっといい本売ってあげるから。」

グリフィス 「え?マジ?」

マティルダ 「そうよ。じゃーんっ!
 その名も『7日間で修得できる消失魔導』!
 今度こそこれでバッチリよ☆」

グリフィス 「なにぃぃぃっ!?そ、その本いくらなんだっっ!」

マティルダ 「本当は5万リルは下らないんだけど、
 お得意さま特価ってことで、
 特別に500リルでいいわ。」

グリフィス 「買う買う買うっ!買ったぁぁぁぁっ!」

マティルダ 「毎度ありー。
 今ならおまけでこの消えない消しゴムつけるけど、
 いらない?」

グリフィス 「消えない消しゴムは意味ないだろ。」

マティルダ 「こっそり誰かのと取り替えて楽しむのよ。」

グリフィス 「なるほどっ!」

マティルダ 「この芯のない鉛筆とセットで仕掛ければ完璧よ。」

グリフィス 「なに、そんなのもあるのか?」

マティルダ 「こっちはサービスというわけにはいかないから、
 そうね……お得意様だし、消えない消しゴム1つと
 芯のない鉛筆1ダースをセットで1リルでどう?」

グリフィス 「安いっ!それもつけてくれっ!」

マティルダ 「毎度ありー。〆て501リルね。」

グリフィス 「よーし、見てろよアシストーっ!
 おおっ、なんだか闘志が燃えてきたぞっ!」


マティルダ 「これで不良文具の処分おしまいと。」

グリフィス 「ん?今何か言ったか?」

マティルダ 「いいえ、なにも。」

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