『想いの交錯するお店』
Forbidden Palace Library
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ディラック商店
「スマイル0リルって言えば、
飲めば誰でも笑い出すっていうちょっとおかしなワインなら
前のお店に置いてあったんだけど……。」
「ちょっとどころじゃねえだろ、そのワイン。
そんな物騒なもの置きっぱなしにしとくなよ。
なぁ、そういや前の店はどうしたんだ? 売ったのか?」
「売らないわよ。大事なお店だもの。
けど今は倉庫になってるわ。
だって商品捨てるわけにはいかないでしょ?」
「倉庫にしないで支店として営業すればいいじゃねぇか。」
「そうしたいのはやまやまなんだけど、この大陸では
株式は賭事の一種とみなされて禁止されているから、
一族経営でもない限り本店支店を作りにくいのよ。」
「そうなのか?」
「でも確かにその株式賭博禁止法によって
貧富の格差が格段に小さくなったのは事実よね。
商売人としては少し虚しさもあるけれど。」
「ふーん……俺はあんまり商売のことわからないんだけどさ」
「でしょうね。」
「……今、何か口挟まなかったか?」
「気のせいよ。虚しい幻聴じゃない?
そういえばグリちゃん、禁呪を覚えたいって言ってたわよね?
実はいい本が……。」
「それで思い出したぞ、マティルダ。
だいぶ前に買った『3日でわかる禁呪魔導』、
あれ内容インチキだったぞ!」
「あら、今頃気づいたの?」
「ってわかってて売りつけたんかぁぁぁぁぁっ!!!」
「だってあの本、
ブランドブレイにいたころから誰も買おうとしなかったのよ。
在庫処分ぐらいしたくなるじゃない。」
「俺で在庫処分するなぁああああっ!!!」
「お詫びにもっといい本売ってあげるから。」
「え?マジ?」
「そうよ。じゃーんっ!
その名も『7日間で修得できる消失魔導』!
今度こそこれでバッチリよ☆」
「なにぃぃぃっ!?そ、その本いくらなんだっっ!」
「本当は5万リルは下らないんだけど、
お得意さま特価ってことで、
特別に500リルでいいわ。」
「買う買う買うっ!買ったぁぁぁぁっ!」
「毎度ありー。
今ならおまけでこの消えない消しゴムつけるけど、
いらない?」
「消えない消しゴムは意味ないだろ。」
「こっそり誰かのと取り替えて楽しむのよ。」
「なるほどっ!」
「この芯のない鉛筆とセットで仕掛ければ完璧よ。」
「なに、そんなのもあるのか?」
「こっちはサービスというわけにはいかないから、
そうね……お得意様だし、消えない消しゴム1つと
芯のない鉛筆1ダースをセットで1リルでどう?」
「安いっ!それもつけてくれっ!」
「毎度ありー。〆て501リルね。」
「よーし、見てろよアシストーっ!
おおっ、なんだか闘志が燃えてきたぞっ!」
「これで不良文具の処分おしまいと。」
「ん?今何か言ったか?」
「いいえ、なにも。」
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