『想いの交錯するお店』
Forbidden Palace Library
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ディラック商店
「なんかこの店に来ると幻聴がよく聞こえる気がするんだが……。」
「疲れてるんじゃない?
疲労がたまると聴覚が麻痺して錯覚を起こすこともあるのよ。
休日はしっかりと休んだほうがいいわよ。」
「ああ、そうだな。ありがとよ。」
「そこでぐっすり休みたい時はこれ。
じゃーん、どこでも安眠マクラ。
持ち運びもできて便利よ。」
「普通のマクラとどう違うんだ?」
「粉末状のスズランの根っ子が大量に入ってるの。」
「いや、それで寝て下手したら安眠どころか永眠になっちまうだろ。」
「あら、植物のことには詳しいのね。」
「昔、傭兵やってたから、
多少のサバイバル知識は身についているのさ。」
「じゃあ武器なんか興味ない?」
「武器?そんなものまで扱っているのか?」
「これなんかどう?斬れない剣。」
「斬れなかったら意味ないだろ。練習用なのか?」
「いいえ、その代わり柄のところが刃になってるの。」
「そんなもん危なくて使えねえだろうがぁぁぁぁ!」
「えー、でもわりと新品よ。」
「ぜーはーぜーはー……。
わりとってどういうことだよ。
前に誰か使ってたのか?」
「じゃあかなり新品。」
「話をそらすなよ。
それになんかずいぶん曖昧だな。」
「なんとなく新品っていうのは?」
「……もういい。他の品はないのか?」
「じゃあこんなのどう?
カイザリアの初代皇帝が使っていたという幻の剣。
暗殺者グリフィスも捜し求めていたという曰く付きの武器よ。」
「暗殺者グリフィスっ!?
いや、俺は暗殺者になった記憶はないぞっ!?」
「やーねー、はやとちりしないの。
昔、そういう名前の暗殺者がいたのよ。
……あら、そういえばグリちゃんと同名ねぇ。」
「だから俺はグリちゃんじゃない。
で、そいつはどんな奴だったんだ?」
「脚部格闘術の使い手だったらしいわ。
……厳密には脚部格闘暗殺術と言うべきかしら。
相手に魔導詠唱の隙を与えずに蹴り飛ばすのよ。」
「蹴り飛ばす?」
「そう。思いっきりね。
そして相手が転倒したところで、肋骨を蹴りぬく。
あとはとどめを刺すだけってね。」
「……ずいぶんと恐ろしい方法だな。」
「少なくとも剣を手にしていない相手には有効だったみたいよ。
それに例えその相手が剣や槍の使い手でも、
武器を取られる前に急接近して倒せばいいんだから。」
「一撃必殺ってことか……。」
「そう。その技の使い手だった彼女はある2本の剣を巡って
ブランドブレイを動乱の一歩手前まで追いこんだのよ。
あるいは、巻き込まれたのかもしれないけど……。」
「その女の名前が俺と同じグリフィスなのか?」
「聞いた話では名前じゃなくて姓名がグリフィスだったっていう話だけど。」
「だった?どうして過去形なんだ?」
「結婚した後に死んだらしいの。今から30年ほど前に。」
「死んだ?殺されたのか?」
「詳しいことは分からないわ。
子供を産んだ後しばらくしてこの世を去ったという話もあるけど、
噂のどこまでが真実かなんてわからない。」
「…………。」
「けど、全てはそれで終わらなかった。
グリフィスに脚部格闘暗殺術を教えた師匠が
彼女の死後、入れ替わるようにして表舞台に出てきた。」
「師匠とやらも、その一件に絡んでいたのか?」
「どうかしら。直接聞いたわけじゃないから。
そのあたりのごたごたはあたしもよく知らないけど、
とにかくブランドブレイは全力を挙げてその師匠を捕らえようとしたのよ。」
「それで、その師匠はどうなったんだ?」
「結論から言うと、逃げきったっていう話よ。
数年間はブランドブレイの騎士団長に追われていたみたいだけど、
そのうちにどちらも姿を消したわ。」
「姿を消した?騎士団長もか?」
「両者の間に何があったのかは知らない。
けどその師匠は暗殺者をやめ、騎士団長もブランドブレイを去った。
事実としてそれだけが残っているのよ。」
「…………。」
「もったいないわよね。
代々騎士団長を輩出した由緒ある名門の家系なのに、
それをあっさり捨てちゃうだなんて。」
「……その気持ち、今ならなんとなく分かるかもしれねぇな。」
「え?」
「いや、その騎士団長どんな奴だったんだろうなと。」
「きっとただのロリコンでしょ。」
「え?」
「なんでもない。こっちの話。」
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