『想いの交錯するお店』 Forbidden Palace Library::

ディラック商店



^^^^^
ディラック商店

グリフィス 「なんかこの店に来ると幻聴がよく聞こえる気がするんだが……。」

マティルダ 「疲れてるんじゃない?
 疲労がたまると聴覚が麻痺して錯覚を起こすこともあるのよ。
 休日はしっかりと休んだほうがいいわよ。」

グリフィス 「ああ、そうだな。ありがとよ。」

マティルダ 「そこでぐっすり休みたい時はこれ。
 じゃーん、どこでも安眠マクラ。
 持ち運びもできて便利よ。」

グリフィス 「普通のマクラとどう違うんだ?」

マティルダ 「粉末状のスズランの根っ子が大量に入ってるの。」

グリフィス 「いや、それで寝て下手したら安眠どころか永眠になっちまうだろ。」

マティルダ 「あら、植物のことには詳しいのね。」

グリフィス 「昔、傭兵やってたから、
 多少のサバイバル知識は身についているのさ。」


マティルダ 「じゃあ武器なんか興味ない?」

グリフィス 「武器?そんなものまで扱っているのか?」

マティルダ 「これなんかどう?斬れない剣。」

グリフィス 「斬れなかったら意味ないだろ。練習用なのか?」

マティルダ 「いいえ、その代わり柄のところが刃になってるの。」

グリフィス 「そんなもん危なくて使えねえだろうがぁぁぁぁ!」

マティルダ 「えー、でもわりと新品よ。」

グリフィス 「ぜーはーぜーはー……。
 わりとってどういうことだよ。
 前に誰か使ってたのか?」

マティルダ 「じゃあかなり新品。」

グリフィス 「話をそらすなよ。
 それになんかずいぶん曖昧だな。」


マティルダ 「なんとなく新品っていうのは?」

グリフィス 「……もういい。他の品はないのか?」

マティルダ 「じゃあこんなのどう?
 カイザリアの初代皇帝が使っていたという幻の剣。
 暗殺者グリフィスも捜し求めていたという曰く付きの武器よ。」

グリフィス 「暗殺者グリフィスっ!?
 いや、俺は暗殺者になった記憶はないぞっ!?」


マティルダ 「やーねー、はやとちりしないの。
 昔、そういう名前の暗殺者がいたのよ。
 ……あら、そういえばグリちゃんと同名ねぇ。」

グリフィス 「だから俺はグリちゃんじゃない。
 で、そいつはどんな奴だったんだ?」


マティルダ 「脚部格闘術の使い手だったらしいわ。
 ……厳密には脚部格闘暗殺術と言うべきかしら。
 相手に魔導詠唱の隙を与えずに蹴り飛ばすのよ。」

グリフィス 「蹴り飛ばす?」

マティルダ 「そう。思いっきりね。
 そして相手が転倒したところで、肋骨を蹴りぬく。
 あとはとどめを刺すだけってね。」

グリフィス 「……ずいぶんと恐ろしい方法だな。」

マティルダ 「少なくとも剣を手にしていない相手には有効だったみたいよ。
 それに例えその相手が剣や槍の使い手でも、
 武器を取られる前に急接近して倒せばいいんだから。」

グリフィス 「一撃必殺ってことか……。」

マティルダ 「そう。その技の使い手だった彼女はある2本の剣を巡って
 ブランドブレイを動乱の一歩手前まで追いこんだのよ。
 あるいは、巻き込まれたのかもしれないけど……。」

グリフィス 「その女の名前が俺と同じグリフィスなのか?」

マティルダ 「聞いた話では名前じゃなくて姓名がグリフィスだったっていう話だけど。」

グリフィス 「だった?どうして過去形なんだ?」

マティルダ 「結婚した後に死んだらしいの。今から30年ほど前に。」

グリフィス 「死んだ?殺されたのか?」

マティルダ 「詳しいことは分からないわ。
 子供を産んだ後しばらくしてこの世を去ったという話もあるけど、
 噂のどこまでが真実かなんてわからない。」

グリフィス 「…………。」

マティルダ 「けど、全てはそれで終わらなかった。
 グリフィスに脚部格闘暗殺術を教えた師匠が
 彼女の死後、入れ替わるようにして表舞台に出てきた。」

グリフィス 「師匠とやらも、その一件に絡んでいたのか?」

マティルダ 「どうかしら。直接聞いたわけじゃないから。
 そのあたりのごたごたはあたしもよく知らないけど、
 とにかくブランドブレイは全力を挙げてその師匠を捕らえようとしたのよ。」

グリフィス 「それで、その師匠はどうなったんだ?」

マティルダ 「結論から言うと、逃げきったっていう話よ。
 数年間はブランドブレイの騎士団長に追われていたみたいだけど、
 そのうちにどちらも姿を消したわ。」

グリフィス 「姿を消した?騎士団長もか?」

マティルダ 「両者の間に何があったのかは知らない。
 けどその師匠は暗殺者をやめ、騎士団長もブランドブレイを去った。
 事実としてそれだけが残っているのよ。」

グリフィス 「…………。」

マティルダ 「もったいないわよね。
 代々騎士団長を輩出した由緒ある名門の家系なのに、
 それをあっさり捨てちゃうだなんて。」

グリフィス 「……その気持ち、今ならなんとなく分かるかもしれねぇな。」

マティルダ 「え?」

グリフィス 「いや、その騎士団長どんな奴だったんだろうなと。」

マティルダ 「きっとただのロリコンでしょ。」

グリフィス 「え?」

マティルダ 「なんでもない。こっちの話。」

次へ進む


Copyright(c)1997-2001 Fubuki Kogarashi (木枯 吹雪) fubuki@kogarashi.jp 日本語でどうぞ。