Forbidden Palace Library / 『星降らす銀の天蓋』 /

■ メルセデス市
□ リリエンタール邸


こんこん

セディ 「…………。」


こんこんこん

セディ 「…………。」


こんこんこんこんこんこんこんこん

??? 「はい、どなた様でしょうか?」

セディ 「ふっ、客だ。扉を開けろ。」

??? 「…………。」

セディ 「…………。」

??? 「……お引き取り下さい。」


がちゃり。

セディ 「おい! 待て、鍵を掛けるな。
 リリエンタール卿はいるか?
 バザルト=リリエンタールに用がある。」

??? 「バザルト?
 ……ああ、バソールト様ですか。
 旦那様でしたらここには居られません。」

セディ 「ふっ、そうか。ならばいつ頃戻ってくる?」

??? 「…………。」

セディ 「? いつだと聞いている。」

??? 「わかりません。」

セディ 「わからないだと?」

??? 「はい。もう何年も戻られておりませぬ故。」

セディ 「……なるほど、そういうことか。
 ならば仕方ない。他を当たるとしよう。
 ふっ、邪魔したな。」


たったったっ

メルフィア 「待って。」

??? 「お嬢様っ!」

メルフィア 「構わないわ。鍵を開けて。」

セディ 「?」

??? 「しかし、お嬢様……。」

メルフィア 「いいの、少し聞きたいことがあるから。
 パパを――いえ、父を訪ねてきたみたいだけど、
 貴方、父の知り合いなの?」

セディ 「……いや、直接の面識はない。
 リリエンタール卿にまつわる噂が嘘でなければ、
 頼みたい仕事があっただけだ。」

メルフィア 「仕事?どんな?」

セディ 「金属で作ってもらいたいものがあった。
 戻る気配がないのであれば構わん。
 他を当たることにさせてもらう。」

メルフィア 「だから、待ってってば。
 何を創るのか知らないけど、
 私でよければ話ぐらいは聞くわ。」


ぎぃぃぃぃっ

セディ 「……貴様は?」

メルフィア 「まだ名乗ってなかったわね。
 ラピスラズリ=メルフィア=リリエンタール。
 バソールトの娘よ。メルフィアでいいわ。」



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