「…………。」
「…………。」
「はい、どなた様でしょうか?」
「ふっ、客だ。扉を開けろ。」
「…………。」
「…………。」
「……お引き取り下さい。」
「おい! 待て、鍵を掛けるな。
リリエンタール卿はいるか?
バザルト=リリエンタールに用がある。」
「バザルト?
……ああ、バソールト様ですか。
旦那様でしたらここには居られません。」
「ふっ、そうか。ならばいつ頃戻ってくる?」
「…………。」
「? いつだと聞いている。」
「わかりません。」
「わからないだと?」
「はい。もう何年も戻られておりませぬ故。」
「……なるほど、そういうことか。
ならば仕方ない。他を当たるとしよう。
ふっ、邪魔したな。」
「待って。」
「お嬢様っ!」
「構わないわ。鍵を開けて。」
「?」
「しかし、お嬢様……。」
「いいの、少し聞きたいことがあるから。
パパを――いえ、父を訪ねてきたみたいだけど、
貴方、父の知り合いなの?」
「……いや、直接の面識はない。
リリエンタール卿にまつわる噂が嘘でなければ、
頼みたい仕事があっただけだ。」
「仕事?どんな?」
「金属で作ってもらいたいものがあった。
戻る気配がないのであれば構わん。
他を当たることにさせてもらう。」
「だから、待ってってば。
何を創るのか知らないけど、
私でよければ話ぐらいは聞くわ。」
「……貴様は?」
「まだ名乗ってなかったわね。
ラピスラズリ=メルフィア=リリエンタール。
バソールトの娘よ。メルフィアでいいわ。」