Forbidden Palace Library / 『星降らす銀の天蓋』 /

■ メルセデス市
□ リリエンタール邸

エーデル 「お嬢様、ミルクティーをお入れしました。」

メルフィア 「ありがとう。こちらの方にも何かお出しして。」

エーデル 「お客さま、井戸水でございます。」

セディ 「待て。
 ふっ、なんだこの待遇の差は。
 この家では客人に対して水を出すのか。」

エーデル 「井戸水がご不満というのであれば、泥水をご用意致しますが。」

セディ 「ふっ、メルフィアと言ったな。
 貴様の所の執事は
 なかなか良い教育をされているようだな。」

メルフィア 「いーえ。
 お褒めにあずかり光栄だわ。
 ……この方にもお茶を出して差し上げなさい。」

エーデル 「………………はっ。」

セディ 「ふっ、なんだその不満そうな声は。」

メルフィア 「私の出がらしでいいから。」

エーデル 「はっ!」

セディ 「貴様も少し待て。」

メルフィア 「何よ?」

セディ 「……いや、いい。2対1は止めておこう。
 貴様等の親の顔が少しみたいと思っただけだ。
 それはともかく用件に入ろう。」

メルフィア 「金属で何かを作るって話だっけ?」

セディ 「その通りだ。
 その前に一つ誓って欲しい。
 これから話すことは誰にも伝えないと。」

メルフィア 「ええ、いいわ。
 別に伝える相手もいないもの。
 それで?」

セディ 「ふっ、まずはこれを見てらおう。」


ぱらっ

メルフィア 「……武器の設計図?
 剣みたいな形だけど……変な割れ方をしているわ。
 これはなに?」

セディ 「深くは聞くな。
 これと同じ物を造れるか、
 まずはそれを答えて貰いたい。」

メルフィア 「……図面の注釈、色々と指示が細かいわね。
 それにかなりの精度を必要としている。
 寸分の狂いもなくこれと同じサイズのものをってことよね?」

セディ 「そうだ。」

メルフィア 「かなりの精密な作業が要求されるわね。
 それで、材質については何も書かれていないけど……。
 これはシェナ?それともリル?」

セディ 「銀だ。」

メルフィア 「……銀?
 ちょっと貴方、材料費だけで一体
 いくらかかるか分かって言ってるの?」

セディ 「無論。」

メルフィア 「だったらなおさらよ。
 悪いけど、そんな途方もない話には付き合えないわ。
 そもそも、それだけの支払い保証がない限り……。」

セディ 「銀インゴット等価交換証明書ならここにある。確認するといい。」

メルフィア 「!?」

エーデル 「…………見たところ、本物ですな。」

セディ 「ふっ。
 偽物だと思うなら穴が空くまで調べるが良い。
 ……待て、そこの執事、本当に穴を開けようとするな!」

エーデル 「ただの冗談です。ちっ。」

セディ 「そう聞こえんから言っているのだ!」

メルフィア 「……間違いは、なさそうね。
 もういちど聞くわ。
 貴方、これは本気なの?」

セディ 「ふっ。冗談や酔狂で、
 遙々大陸のこんな北の果ての田舎町にまで
 来たりはせん。」

メルフィア 「いーえ。田舎で悪かったわね。」

エーデル 「お嬢様、この無礼者を追い出しましょうか?」

セディ 「ふっ。それより先にこの無礼な執事を先にどうにかしてもらえないか。」

メルフィア 「で。この設計図と同じものを創ればいいの?」

セディ 「そうだ。出来るか?」



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