「お嬢様、ミルクティーをお入れしました。」
「ありがとう。こちらの方にも何かお出しして。」
「お客さま、井戸水でございます。」
「待て。
ふっ、なんだこの待遇の差は。
この家では客人に対して水を出すのか。」
「井戸水がご不満というのであれば、泥水をご用意致しますが。」
「ふっ、メルフィアと言ったな。
貴様の所の執事は
なかなか良い教育をされているようだな。」
「いーえ。
お褒めにあずかり光栄だわ。
……この方にもお茶を出して差し上げなさい。」
「………………はっ。」
「ふっ、なんだその不満そうな声は。」
「私の出がらしでいいから。」
「はっ!」
「貴様も少し待て。」
「何よ?」
「……いや、いい。2対1は止めておこう。
貴様等の親の顔が少しみたいと思っただけだ。
それはともかく用件に入ろう。」
「金属で何かを作るって話だっけ?」
「その通りだ。
その前に一つ誓って欲しい。
これから話すことは誰にも伝えないと。」
「ええ、いいわ。
別に伝える相手もいないもの。
それで?」
「ふっ、まずはこれを見てらおう。」
「……武器の設計図?
剣みたいな形だけど……変な割れ方をしているわ。
これはなに?」
「深くは聞くな。
これと同じ物を造れるか、
まずはそれを答えて貰いたい。」
「……図面の注釈、色々と指示が細かいわね。
それにかなりの精度を必要としている。
寸分の狂いもなくこれと同じサイズのものをってことよね?」
「そうだ。」
「かなりの精密な作業が要求されるわね。
それで、材質については何も書かれていないけど……。
これはシェナ?それともリル?」
「銀だ。」
「……銀?
ちょっと貴方、材料費だけで一体
いくらかかるか分かって言ってるの?」
「無論。」
「だったらなおさらよ。
悪いけど、そんな途方もない話には付き合えないわ。
そもそも、それだけの支払い保証がない限り……。」
「銀インゴット等価交換証明書ならここにある。確認するといい。」
「!?」
「…………見たところ、本物ですな。」
「ふっ。
偽物だと思うなら穴が空くまで調べるが良い。
……待て、そこの執事、本当に穴を開けようとするな!」
「ただの冗談です。ちっ。」
「そう聞こえんから言っているのだ!」
「……間違いは、なさそうね。
もういちど聞くわ。
貴方、これは本気なの?」
「ふっ。冗談や酔狂で、
遙々大陸のこんな北の果ての田舎町にまで
来たりはせん。」
「いーえ。田舎で悪かったわね。」
「お嬢様、この無礼者を追い出しましょうか?」
「ふっ。それより先にこの無礼な執事を先にどうにかしてもらえないか。」
「で。この設計図と同じものを創ればいいの?」
「そうだ。出来るか?」