「……率直に言って、時間がかかるわ。」
「ふむ。どのぐらいだ?」
「この注釈に忠実に創るなら1ヶ月ほど。
適当ななまくらでもいいって言うのなら、
時間は短縮できるけど?」
「……わかった。時間かかっても構わん。
どうせ今すぐ使うわけではない。
その代わり、精度は必ず高めてくれ。」
「ただし、こっちも条件が一つ。」
「?」
「先にその銀のインゴット交換証を渡して。
そして余った分量は私の取り分。それとは別に報酬十万リル。
それでよければ引き受けるわ。」
「お嬢様っ!」
「ふっ。貴様、銀の価値を知って言っているのか?」
「当然よ。
この仕事がどれだけ難しいか、分かってて依頼してるのでしょう?
だったら相応の支払いは欲しいわね。」
「……ふっ。よかろう。
その妥協せぬ姿勢、気に入った。
余った分は全てくれてやる。」
「え?」
「……どうした、驚いた顔して?」
「え、いえ、まさか本当に通るとは……思わなかったから。」
「だからといって材料をケチったり手を抜いたら、
力づくでも全てを取り返させて貰う。
それでよいな?」
「ええ。私は決して仕事に手を抜いたりしないわ。」
「ふっ、頼んだぞ。
完成するまでの1ヶ月、この町に滞在している予定だ。
ちょくちょく様子を見には来る。」
「分かった。
こっちも途中で直接確認したい箇所が出てくると思うし。
それで、一つ疑問なんだけど。」
「ふっ、何だ?」
「こんな先の割れた銀の剣なんて、何に使うの?」
「ふっ。
ちょっとした保険というところだ。
将来のためのな。」
「将来? 剣と結婚でもするの? 無機質相手よ?」
「そういう話ではないっ!!!」