Forbidden Palace Library / 『星降らす銀の天蓋』 /

■ メルセデス市
□ リリエンタール邸


一週間後。


セディ 「!?」

メルフィア 「あら、セディ。
 いらっしゃい。
 ……どうしたの、目が開いてるわよ?」

セディ 「ふっ……私の目の錯覚でなければ、
 銀の塊が宙に浮いているように見えるのだが。
 それも支え無しに。」

メルフィア 「反重力魔導で浮かせているのよ。」

セディ 「……反重力魔導だと、そんな存在は初耳だぞ!
 重力傾斜による移動魔導は禁呪として存在しているが、
 このような物質を固定化する代物ではない。」

セディ 「おい、一体どこでこの魔導を身につけた?」

メルフィア 「どこって、パパに教わっただけよ。」

セディ 「……バザルト氏が、か?
 奴はそんなに曲者だったのか……?
 問いただしたいがいないのが残念だ。」

メルフィア 「ちょっと、人の親捕まえて曲者呼ばわりしないでもらえる?」

セディ 「ふっ、それもそうだな、すまん。」

メルフィア 「いーえ。」

セディ 「その話は追々聞くとしよう。
 しかし、依頼品の進捗を見に来て
 改めて気づいたが……。」

メルフィア 「何よ?」

セディ 「どうにも殺風景な家だな。
 紙と本と魔導器具が大量にある割には
 生活感が感じられない。」

メルフィア 「ほっといてよ、私の勝手でしょ。」

セディ 「バザルトはともかく、母親はいないのか?」

メルフィア 「――知らない。
 私が物心ついたときには、
 既に居なかったみたい。」

セディ 「……そうか。」

メルフィア 「…………。」

セディ 「…………すまんな、変な話を。」

メルフィア 「いーえ。別に?」



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