「!?」
「あら、セディ。
いらっしゃい。
……どうしたの、目が開いてるわよ?」
「ふっ……私の目の錯覚でなければ、
銀の塊が宙に浮いているように見えるのだが。
それも支え無しに。」
「反重力魔導で浮かせているのよ。」
「……反重力魔導だと、そんな存在は初耳だぞ!
重力傾斜による移動魔導は禁呪として存在しているが、
このような物質を固定化する代物ではない。」
「おい、一体どこでこの魔導を身につけた?」
「どこって、パパに教わっただけよ。」
「……バザルト氏が、か?
奴はそんなに曲者だったのか……?
問いただしたいがいないのが残念だ。」
「ちょっと、人の親捕まえて曲者呼ばわりしないでもらえる?」
「ふっ、それもそうだな、すまん。」
「いーえ。」
「その話は追々聞くとしよう。
しかし、依頼品の進捗を見に来て
改めて気づいたが……。」
「何よ?」
「どうにも殺風景な家だな。
紙と本と魔導器具が大量にある割には
生活感が感じられない。」
「ほっといてよ、私の勝手でしょ。」
「バザルトはともかく、母親はいないのか?」
「――知らない。
私が物心ついたときには、
既に居なかったみたい。」
「……そうか。」
「…………。」
「…………すまんな、変な話を。」
「いーえ。別に?」