Forbidden Palace Library / 『星降らす銀の天蓋』 /

■ 法都エルメキア
□ 法院密室

「どうだね、残りの図面はありそうか?」

「間違いない。
 あれだけの書類と設計図の山だ。
 確実にあの中のどこかにあるはずだ。」

「さすれば『天蓋』の完成もそう遠くない――!」

「中枢基盤は決して大きなモノではない。
 それにおおまかな方程式も予め想像はついている。
 図面さえ手に入れば、作り上げるのにそう何日もかからぬ。」

「宣言文も用意した。
 新法の発布も既に準備は整っている。
 あとは、設計図さえ手に入れば……。」

「――だが、奴の姿があった。それが気になる。
 まさかこれほど早くに察したなどということは。
 恐らく偶然だとは思うが……。」

「奴? 誰の話だ?」

「――いや、大した懸案事項ではない。忘れてくれ。」

「……どうやら君は自分の役割を、
 時折忘れることがあるようだね。
 いいか、懸念かどうかを判断するのは君ではない。我々だ。」

「…………。」

「我がエルメキア国旗は左右の釣り合った天秤の紋様。
 何故、君が最高法師に選ばれたのか、
 分かっているであろう?」

「……はい。」

「うむ。理解しているならそれで宜しい。
 一つの目的のために派閥で争うなど無駄なこと。
 そのために君は折衷案として選ばれたのだ。」

「別に貴公をないがしろにするというのではない。
 ただ今はバランスが必要なのだ。
 そう、秩序による社会と人類のバランスが。」



エクセキューシェ・エル・メイキア。
「法の名の下に於いて、執行す。」


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