「よろしい。
ではこれより、
禁忌魔導開発嫌疑についての査問を開始する。」
「被疑者はまず、名前を名乗りなさい。」
「……ラピスラズリ=メルフィア=リリエンタール。」
「続いて生年月日と、出身地を。」
「158年11月4日生まれ、出身地は――分かりません。」
「……リリエンタール被疑者。
貴方は先ほど『メルフィア』と名乗ったが、
それは法籍には乗っていない名前ですね。」
「父が、付けてくれた二つ名です。
自称として名乗っているもので、
法的な根拠はありません。」
「ふむ。どちらの名前で呼ぶべきかね?」
「どちらでも。お好きな方で。」
「ではリリエンタール被疑者のままで行くとしよう。」
(どっちでもないじゃない!だったら最初から聞かないでよ!)
「続いて出身地についてだが。」
(……査問は人格に対する粗探しだとは聞いていたけれど、
本当にどうでもいいことから始まるのね。
セディの仕事も、あと少しの完成間近で忙しいのに。)
「リリエンタール被疑者は出身地不明と述べたが、
これはどういうことかね?
法籍にも横線がただ一本引かれている。」
「…………分かりません。」
(知るわけないでしょ。
自分でも知らないから『分からない』って答えたのよ!)
「よくこれで法籍が取得できたものだ。
長年査問会議に携わってきたが、
このような法籍を見るのは初めてだよ。」
(はいはい。だからなんなのよ?現実にあるものは仕方ないでしょ。)
「さて、本日召喚したのは他でもない。
冒頭に述べたように、リリエンタール被疑者には
禁忌魔導開発の嫌疑がかかっている。」
「…………。」
「我が礼と法の国の禁忌魔導基準が
かつてのラファエル王国法に準拠しているのは
知っているかね?」
「はい。聞き及んでおります。」
「エルネストの禁じた魔導のひとつ、
『魔導金属を用いた【先割れ剣】の製造』
に該当する物を密造しているという情報が入っている。」
(!
セディの依頼品――!?
え、嘘、あれ禁忌に該当するなんて一言も聞いてないわ!)
「これをラファエル王国時代の法に照らし合わせるならば……」
「エルネストの命令以外によって製造してはならないと定められている。
そのエルネストが既に存在していない以上、
全ての【先割れ剣】製造は禁忌になることはおわかりかね?」
「…………。」
「証拠物件と、全ての資料を任意提出して貰おう。」
「……断る、と言ったらどうなるの?」
「貴方に拒否権はない。」
「くっ。」
「強情なところは父親と変わらぬか……。」
「どうしてそこでパパが出てくるのよ。」
「実を言うとだな。」
「何よ?」
「そう答える思って、既に法兵を君の家に派遣してある。
今頃数十人で家宅捜索をしているはずだ。
それが終わるまで君を拘束させてもらう。」
「!? なんですって!!!」