Forbidden Palace Library / 『星降らす銀の天蓋』 /

■ 法都エルメキア
□ 地下水道


てくてくてく

メルフィア 「………………。」


てくてくてく


ぴちゃんっ

メルフィア 「………………。」


てくてくてく


ぴちゃんっ

メルフィア 「あたし、こんなところで何やってるんだろう。
 埃と泥まみれになって、
 いつの間にか靴もどこかで片方なくして……。」


じわっ

メルフィア 「……パパが行方不明になってから、
 二度と泣かないって決めていたんだけどな。
 あは……上、向かなきゃ。」

メルフィア 「……あたし、一人で生きてても無駄なのかな。
 でも、こんなところで死んでも、
 生きた世界に何も遺せない……本当に無駄になってしまう。」

メルフィア 「私の生きている役目は、何……?
 こんなところで野垂れ死ぬために、
 今まで生きてきたの……?」


……つぅーっ。

メルフィア 「――もっと、上向かなきゃだめかな。」


ぴちゃんっ

メルフィア 「!?」

セディ 「どうやら、その様子だと査問は散々だったみたいだな。」

メルフィア 「っ!?
 セディ!!!
 な、なんで、こんなところに――っ。」


ごしごしごしっ

セディ 「ふっ、今更涙を拭くこともあるまい。」

メルフィア 「は、恥ずかしいのよっ!
 それよりどうしてこんな所に!?
 なんでここにいるの!?」

セディ 「法兵が地上で必死に捜索しているのを見かけてな。
 もしやと思って潜ってみたのだが……。
 見事正解だったみたいだな。」

メルフィア 「……セディ。」

セディ 「ふっ。なんだ?」

メルフィア 「やっぱり大きい涙がこぼれそうなの。何も言わず胸貸して。」

セディ 「!?」


――――こつん



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