Forbidden Palace Library / 『星降らす銀の天蓋』 /

■ メルセデス市
□ リリエンタール邸跡

セディ 「これは、ひどいな。」

メルフィア 「……こんなに、やりたい放題に荒らして――。」

セディ 「数日留守にしただけで、
 まるで廃屋のように変わるとは。
 家の壁まで剥がした形跡がある。」

メルフィア 「ずっと、この家で……みんなを待っていたのに――。」

セディ 「…………。」

メルフィア 「無い、無いわ。本も、実験器具も、なにもかも。
 思い出の品々もみんな持ち去られて……。
 ……あたしは、あたしは……ぅうっ。」

セディ 「泣きたければ泣くがいい。胸ぐらい貸してやろう。」

メルフィア 「――うぇっ……うぇっ……
 うわぁあああああああああんっ!
 うわぁあああああああああんっ!」

セディ 「…………。」

メルフィア 「ひぐっ……えうっ…………。」

セディ 「…………。」

メルフィア 「……パパ……ジェイド、ネフライト。
 ごめんね。あたしの力が足りなくて、
 この家、守れなかった……。」

セディ 「ふっ。自らを責めることはない。
 一人で国家に抗ったところで、限界というものがある。
 むしろ、それでもよく頑張った方だ。」

メルフィア 「…………。」

セディ 「ふっ。どうした?呆然とした顔して。」

メルフィア 「いーえ、
 貴方に素直に褒められたのって
 なんだか初めてな気がして。」

セディ 「ふっ。
 そう思うならば、深く胸に刻んでおけ。
 ……そろそろ落ち着いたか?」

メルフィア 「……少しは。
 けれど、もう、
 ここに留まる理由はなくなっちゃったわね……。」

セディ 「この様子だと、依頼品も持ち去られたか。」

メルフィア 「……待って。あれは隠しておいたの。」

セディ 「何?」



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