「なるほど、床下の隠し収納庫か。
だが、空っぽではないか。
やはり持ち去られた後か……。」
「と、思うでしょ。はい、コレ。」
「ん? シャベルだと?」
「収納庫の更に下に埋めたのよ。はい、掘って。」
「……待て、私が掘るのか!?」
「そうよ。力作業は男の仕事よ?」
「……何故私がこのような力仕事を。」
「ぶつぶつ言わない。立ってる者は親でも使うの。
あ、もうちょっと右。
そう、そこ。」
「……っ!」
「丁度そのあたりよ、気を付けて。
ゆっくり持ち上げて。
そう、そのまま上に――――。」
「ほう。これは……。」
「よかった、無事みたい。
念のため出かける前にここに埋めておいたの。
隠し収納庫の下にまた隠してるなんて普通は考えないでしょう?」
「ふっ。でかしたぞ、メルフィア。」
「いーえ。」
「?」
「だけど、ちょっと待って。」
「ふっ、なんだ?」
「この剣を貴方に引き渡す前に、
聞きたいことがあるの。
――前に言ってた話は、本気?」
「???」
「一人で勝てなくても、二人なら勝てるかもって話。
私と、貴方で、議会に。
そう言ったのは貴方よ、セディ。」
「……法院に喧嘩を売るつもりか?」
「率直に答えて。あれは本気で言っていたの?」
「だとすれば、貴様はどうする?」
「残りの報酬はいらない、その代わりに貴方の手を貸して。」
「……ほう。」
「もう、守るべきものもなければ帰る場所もない。
私から全てを奪い取ったあいつらに、
一矢報いてやりたいのよ。」
「…………。」
「なにより、パパとの大事な思い出を奴らは奪った。
それが許せないのよ。
私の全てを否定した奴らを。」
「……なるほどな。」
「それでどうなの、セディ? 答えて。」
「……今のこの国は少々危険すぎる。
それは感じていたところだ。
放置してアルゲンタインの二の舞になるのは勘弁だ。」
「!」
「よかろう。
私も丁度似たようなことを考えていたところだ。
法院に乗り込むぞ。」
「……ありがとう。」
「ふっ。たまたま思惑が一致しただけだ。有り難く思え。」
「当然、借りはきっちり返させてもらうわ。
どうせもうこの国に未練はないもの、
やるだけの事はやってやるわ。」
「ふっ、よく言った。早速準備にかかるぞ。」
「――ありがとう。
そして、さようなら。
私と家族の家……。」