『いつの日か、きっと』
「今回もなんとか追い返した、な……」
「んんん。礼を言うよ、君たちの力無くしては勝てなかっただろうし。」
「いやあ、そんなぁ、もっと言ってくれ。」
「だから調子に乗るんじゃないよ、グリフィス!」
「んんん。ただ惜しむべきは……。」
「いってぇ……惜しむべきは?」
「今回は爆発実験が出来なかったという事だ。次回こそ必ず……。」
「はい?」
「んんん、いやいや、なんでもない。こっちの話だよ。」
「で、これからどうするんだ、マルス。
きっと奴ら、またこの港町に攻めてくるぜ。
それも恐らく今回よりも大勢力で。」
「んんん。
こっちも2個師団の援軍と合流できたし。
大丈夫じゃないかな。」
「少し待ってください、マルス師団長様。
それではシルバニア王都の警備が薄手になってしまうのではないでしょうか?
もし私がエンディルなら両方同時に攻め入りますが……。」
「んんん。
それも正論なんだけど、
この港町が破壊されたら王都への食料流通が半減しちゃうから。」
「つまり、ここバレンタイン港の防衛は、
王都への兵站確保の意味合いも
含まれていると……?」
「んんん。その通り。」
「レイディ、お前どうして師団長の前だと口調が違うんだ?」
「アタイが普通の言葉使うのがそんなに変かい?」
「いや、変じゃねぇさ。むしろ違和感がないぐらいだけどよ……。」
「ガサツなアタイには似合わないって言いたいのかい?」
「そうじゃねぇけどよ……。」
「……グリフィス、お前何さっきからムキになってんだよ?」
「べ、別にお前がマルスに対して使う言葉遣いが
普段と違うからとかそういう理由じゃないぞ!
断じて!」
「なんだい、そんな下らない事でムキになっているのかい?」
「よく考えたら俺、お前の本名だって知らないぜ?」
「んんん。それでずっと一緒に旅をしていたのかい?」
「余計な詮索はするなって言ってあるだろ、グリフィス。
アタイは過去を捨てたんだ。
ここにいるのはレィディという一人の傭兵。それでいいじゃないか。」
「……わかったよ。」
「伝令!
先ほどの戦闘にて負傷した第1・第3正副師団長に代わり、
師団を臨時指揮していた者達が出頭到しました。」
「んんん。中に入れてちょ。」
「失礼しまぁす☆」
「んんん。君がさっきの戦いで軍を指揮していたっていう?」
「ぴんぽーん☆ あたしはユリア=ハーシェル第3師団・第5大隊長☆」
「んんん。ユリア=ハーシェル?
ハーシェルってことは、
ボイス=ハーシェル将軍のお孫さん?」
「ぴぃんぽーん、あったりぃ☆」
「んんん。通りで見覚えがあると思った。
……ん?
報告ではもう一人いるはずじゃなかったかな?」
「そうなんだけど、それが……」
「バレンタイン港軍舎作戦会議室……あ、ここだここだ。」
「???」
「んんん。君は?」
「……僕?ケイン=アークライト第1師団、第1大隊長。」
「んんん、君がさっきの戦いで師団を指揮していたっていうもう一人の。」
「……ふぅ。また道に迷ってたの?なーにやってんだか。」
「うん、そうなんだジュリアさん。」
「だ・か・ら、あたしはジュリアじゃなくてユリアだっていってるでしょっ!」
「おい、いきなり喧嘩するなよ。」
「んんん。とにかく遠路はるばるご苦労。
どうやら君たちの師団長達は怪我でしばらく戦線復帰できそうにないから
代わりに君たちがそのまま指揮を続けてくれないかな。お願い。」
「うん。僕が師団長代理?」
「あたしも?やったぁー☆」
「んんん。その通り。」
「よかったね、ジュリアさん。」
「だ・か・ら! あたしはユリアっ!
って、ち、ちょっと、アークライトっ!
そんなに近づかないでよねっ!半径5メートル以内立入禁止っ!!!」
「……なんかあいつら仲悪いみたいだな。」
「んんん。マルス君はそうは思わないんだけどね。」
「え?」
「ふふふ。」