『いつの日か、きっと』
「そこだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「!!!」
「俺の……勝ちだっ!!!」
「ぐっ……だがそのままでは……汝らもまた滅びるぞ……。」
「……いずれ形ある物は消えてなくなるのよ。」
「レィディ!大丈夫なのかっ!?」
「なんとか……意識は取り戻したよ。」
「でも流血が……っ!」
「ああ。ちょっと失血しすぎているらしい。頭がくらくらする。」
「……生があるから死もある。それが世界の理なのよ。」
「だがその消滅を少しでも伸ばすために、
汝らは一度今の魔導文明を捨てる必要があるのだ。
さもなければ、我らの様に過ちを繰り返す事になる……。」
「過ち?」
「汝らの用いる魔導という技、それは人の手に余る物。」
「どんな物だって、
使い方によっては良くも悪くもなるわよ。
きちんと扱えばいいことじゃない。」
「……だが、それでも手に負えないものは存在する。」
「だったら手の届かない所に保管すればいいことじゃねぇか。」
「……くくくくく。」
「何がおかしい!」
「今の汝の台詞と、同じ台詞を言った奴が昔いた事を思い出してな。」
「???」
「結局、奴とは決別したままだ……。」
「奴?」
「我と同じく人間としての制約を越えた元人間の一人だ。奴は我らに言った。
『人にとって禁断なれば、手の届かない所に保管すればいい!
ならば私がその役を引き受ける』と。それ以来、奴とは会っていないが……。
もう千年以上昔の話だ……懐かしいな、あの頃が。」
「千年以上っ!?……あなたは……一体何なのよっ!?」
「よくわかんねぇけど、保管されるならそれでいいじゃねぇか?」
「だが、我らにもやがて死は訪れる。
それに我と同じく力を持つ者はもう数えるほどしか残っていない……。
人にとって禁断なりし物を永遠に守り続けることが困難なれば、
無くすしかない。」
「俺は魔導のことをよく知らねぇ。
そして俺達とお前達のどっちの意見が正しいかは分からねぇ。
でも一つだけ確実に言えることはな、
その危険な側面を持つ魔導がなきゃ俺達は暮らしていけないってことだ。」
「そうよ。
木材の切断も、金属の精錬も、食料の保存も、火を起こすのも、
全て魔導の力なくしてはやっていけないんだから!」
「やはり理解し合うことは出来ぬようだな……。
どのみち我は汝に負けた。
ゼルイリアス……ゾロディエール……すまない……」
「いや……このまま生き続けていたなら、
いずれ奴とも再び戦う事になっていただろう……。
そうなる前に死ぬことが出来てよかったのかもしれん。」
「我は長く生きすぎたのかもしれぬな……。
……さらばだ。
この世界の人間達よ……。」
「…………。
…………。
……勝ったの……か?」
「ああ、どうやらその様だな……」
「エンディル達、紫電の中へと撤退していくわっ!!!」
「勝利だ……俺達の……バレンタイン港は守られたんだっ!!!」