『終わらない夢の果てに』
ブランドブレイ王国 学術都市ウニベルシダー かつて大陸全土を支配していたとされるラファエル王国。その統治時代、大きくなりすぎた首都シャロンから7つの教育機関を移転させる計画が発案された。 その時に選ばれたの選定地の内の一つが、ここ学術都市ウニベルシダー。 移転した3つの旧制大学、現在の高等学院を中心に町は広がりを見せている。 余談になるが、残りの4つが移転したもう一つの選定地は、現在のエルメキア礼法国の首都エルメキアである。 その都市の中央部に位置した高等学院の校舎は多くが崩れ落ち、小さな瓦礫の丘を築いている。 住民の多くは事前に逃げたのだろう、幸いなことに人の気配はほとんどない。 |
「やはり老朽化した建物は脆いな。
たかが衝撃波でこれほどまで崩れ落ちるとは。
かなり嬉しい誤算だったな。
これで少しは楽に…………。」
「やめろ、ゾロディエール!」
「――邪魔をするのは何者だ?」
「俺様だ。
ジェラード=コペルニクス。
また会ったな。ちゃきーん」
「先ほどの御主か……ふむ?
……ほう、後ろに懐かしい人物がいるな。
何故この世界にいる、アートレーゼ?
まさか気が変わってこの世界に味方するつもりか?」
「いいえ、
私は全てを見届けたいだけよ。
月に関わった者として。」
「相変わらず傍観者というわけか……。
邪魔をしないのであればよかろう。
今更御主とは戦う理由もない。」
「戦いは――無益だ。」
「ほう?」
「人を傷つける武器はいらない。
自分に自信を持つことが、最大の武器のはずだ。
俺様はそれを信じる。」
「だから戦には不向きなその道具を持っているというわけか?」
「そうだ。
戦いに本当に必要なのは武器じゃない。
お互いが正面を向き話し合うことだ。」
「……手前もかつてそう考えていたよ。
まだこの世界で起こっていないことを知れという方が無理なのかもしれん。
だからこそ、手遅れにならないうちに介入する必要があるのだ。」
「この世界で、まだ起こっていないこと? どういうことだ?」
「………………。」
「……いや、いっそのこと勝手に滅びた方がいいのかもしれないな。
今になって少しだけ、あの御仁の気持ちが分かってきた。
だが、人間が他の生物を巻き添えにする必要はどこにもないのだ。」
「……お喋りが過ぎたようだな。
本当なら不穏分子は僅かでも抹消したいところだが、
いまはゼルイリアスらとの連携作戦が優先なのでな仕方あるまい。
次の目標地点へ向かうことにしよう。」
「次の目標地点だと?」
OM KEVEES O... !」
「待て、ゾロディエール!!!
…………消えたか!
どこに行った!?」
「空間移動したのね。
でも彼は最後に東を向いていたわ。
恐らく、その方角に行くつもりね。」
「東…………?」