『終わらない夢の果てに』
「どうして邪魔したのよっ!!!
私はゾロディエールを許せない! 父と母の仇……絶対に許せない!
私は負けるわけにはいかない。なのにどうして!」
「やめろっ!!!」
「きゃっ……なにするのよっ!」
「貴様のような小娘が剣を手に取ったところで何になる?
言っただろう、戦いは無益だと!
争い、血を流したところで何も得られる物はない!」
「父も母も、目の前で殺されたのよ!?
それを黙って見過ごせっていうの!?
こんなところで負けてもいいっていうの!?」
「……もし貴様が死んだなら、
その小さい弟の面倒は誰が見るんだ?
唯一の祖父とてもうあまり長くはないのだろう?」
「…………だからって。」
「戦うだけが全てではない。
勝ち負けだけが全てではない。
そんな定規で計れないものはいくらでもある。」
「だからって!!!
じゃあ私はどうすればいいの!?
ただ黙って指をくわえていればいいのっ!?」
「……アリス。貴様は帰るんだ、新しい故郷シルバニアへ。
そして弟を守ってやれ、なにがあっても。
未来が残されているのに、自ら命を捨てる必要はない。」
「…………。」
「貴様の父……
ノーベル7月騎士団長の最期の言葉を忘れたのか?
『いまからお前がデニスの母親代わりだ』と。」
「!」
「……遺言を継ぐのだ。
本当に亡き貴様の両親を想うならば剣を捨てろ、二度と手にするな。
最期の言葉を胸に刻み、そして忘れるな。」
「…………。」
「ゾロディエールのことは俺様が引き受ける。だから――」
「え……?」
「もう一度言う。
後は俺様に任せて、シルバニアに帰るんだ。
いいな?」
「…………。」
「……いいな?」
「……はい。」