Forbidden Palace Library #00 「失われた7枚」シリーズ 外伝

『終わらない夢の果てに』




ぱかっ ぱかっ ぱかっ


がたん ごとん がたん ごとん


ジェラード 「無事に馬車は出発したか……。
 今度こそ間違いなく、
 シルバニアに着いてくれるだろう……。」


すっ


アートレーゼ 「……相手が納得するまで話し合う。
 それがあなたの説得方法というわけね。
 大した自信家なのね。そしてお人好し。」

ジェラード 「――アートレーゼ。」

アートレーゼ 「面白い人ね、あなたって。」

ジェラード 「別に。
 ただ、戦いなどという無益なことをしたくないだけだ。
 互いに力を削り合ってもなにもならないからな。」

アートレーゼ 「まるで神に仕える司祭みたいなことをいうのね。」

ジェラード 「『カミ』……?」

アートレーゼ 「そうだったわね……どういうわけかは知らないけど、
 この世界には『神』という言葉どころか
 概念そのものが抜け落ちてるのよね。
 そう、まるで誰かに消されたかのように……。」

ジェラード 「なんだ、その『神』というのは……?」

アートレーゼ 「かつて、まだ人間が未熟だった頃。
 当時の人間にはまだ理解できない現象を説明するのに、
 神という名の架空存在を作り上げることで
 矛盾を解決しようとしていたの。」

アートレーゼ 「それにまつわる言葉はまだあなた達の世界にも残っているわ。
 ……ほんの、わずかだけど。
 それだけ必要とされていた時代があったのよ、あなた達の世界にも。」

ジェラード 「俺様には……神なんか必要ない。
 この高枝切りバサミさえあれば、それでいい。
 戦えないための、この道具さえあれば……。」

アートレーゼ 「……戦えないため?貴方、どういう……」

ジェラード 「そんなことはどうでもいい。
 とにかく今は追うぞ、ゾロディエールを。
 奴の足跡が消える前に。」

アートレーゼ 「…………本当に、面白い人ね、あなたって。」


▽ ……。



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