『終わらない夢の果てに』
「――貴様は滅びた世界の人間。
だから理解できると。
そういいたいのか?」
「然り。
手前とて全てを理解しているわけではない。
だが、御主らただの人間よりは理解しているはずだ。」
「何を見てそう理解したというのよ!?」
「気づかぬのか、アートレーゼ。
なぜこの塔は地下から天井まで一直線に空を穿っているのか、
そしてその最下層に位置する、あの広い球状の部屋の意味を!」
「……!!! 理力臨界――!」
「そう、実に驚くべき事だ。
この世界がそれほどまでの魔導技術を有していたとは。
300年前、何故ゼルイリアスはこの塔に気づけなかったのだ……。」
「……この塔に……?」
「今の御主らにはまだわかるまい!
やがていずれ理解しうる時が訪れる。
だが、そうはさせぬ。」
「あきれるわね、
かつて魔導学の異端児と呼ばれた貴方がそんなことを言うなんて。
貴方もかつてこの世界の人たちと同じ側にいたはずよ!」
「……懐かしいな、そのあだ名を聞くのも。
だからこそ気づいたのだ、異端に交われば異端に染まるということに。
結果として手前をおとしめる以外の何ものでもないことに。
それに気づけなかった者に待つのは、滅びだけだ。」
「そして手前らの世界はそのことに気づけなかった。
月が落ち、母胎を失った魔力が障気となり大地に溢れ、
砕けた月の破片は天蓋に大いなる雲を生み、
そして世界は氷に閉ざされたのだ!」
「!」
「その環境に適応するべく、肉体が急激な進化を遂げた。
暴走した魔力の影響も加わり、変化は一瞬だった。
だが副作用として生まれたのがこの肌の色だ。
そのことは御主の方がよく知っているはずだ、アートレーゼ。」
「……。」
「もはや手前らの世界は滅びる以外に道はない。
その事自体はもはや諦めた。
世界の運命は素直に甘受しよう。」
「…………。」
「だが、黙って滅びを甘受することほど愚かなことはない。
手前らを教訓とし、同じ過ちを繰り返さないために
他の世界の人類を殲滅する。」
「……それが貴様の言い分か?」
「!!! 待ちなさい、ゾロディエール!!!
バルセザリアールの命令は魔導文明のみを滅ぼす事じゃなかったの!?
いつから人類の抹殺になったのよ!?」
「たった、今からだ。」
「!!!!」