Forbidden Palace Library #00 「失われた7枚」シリーズ 外伝

『終わらない夢の果てに』



ジェラード 「――貴様は滅びた世界の人間。
 だから理解できると。
 そういいたいのか?」

ゾロディエール 「然り。
 手前とて全てを理解しているわけではない。
 だが、御主らただの人間よりは理解しているはずだ。」

アートレーゼ 「何を見てそう理解したというのよ!?」

ゾロディエール 「気づかぬのか、アートレーゼ。
 なぜこの塔は地下から天井まで一直線に空を穿(うが)っているのか、
 そしてその最下層に位置する、あの広い球状の部屋の意味を!」

アートレーゼ 「……!!! 理力臨界――!」

ゾロディエール 「そう、実に驚くべき事だ。
 この世界がそれほどまでの魔導技術を有していたとは。
 300年前、何故ゼルイリアスはこの塔に気づけなかったのだ……。」

ジェラード 「……この塔に……?」

ゾロディエール 「今の御主らにはまだわかるまい!
 やがていずれ理解しうる時が訪れる。
 だが、そうはさせぬ。」

アートレーゼ 「あきれるわね、
 かつて魔導学の異端児と呼ばれた貴方がそんなことを言うなんて。
 貴方もかつてこの世界の人たちと同じ側にいたはずよ!」

ゾロディエール 「……懐かしいな、そのあだ名を聞くのも。
 だからこそ気づいたのだ、異端に交われば異端に染まるということに。
 結果として手前をおとしめる以外の何ものでもないことに。
 それに気づけなかった者に待つのは、滅びだけだ。」

ゾロディエール 「そして手前らの世界はそのことに気づけなかった。
 月が落ち、母胎を失った魔力が障気となり大地に溢れ、
 砕けた月の破片は天蓋に大いなる雲を生み、
 そして世界は氷に閉ざされたのだ!」

ジェラード 「!」

ゾロディエール 「その環境に適応するべく、肉体が急激な進化を遂げた。
 暴走した魔力の影響も加わり、変化は一瞬だった。
 だが副作用として生まれたのがこの肌の色だ。
 そのことは御主の方がよく知っているはずだ、アートレーゼ。」

アートレーゼ 「……。」

ゾロディエール 「もはや手前らの世界は滅びる以外に道はない。
 その事自体はもはや諦めた。
 世界の運命は素直に甘受しよう。」

ジェラード 「…………。」

ゾロディエール 「だが、黙って滅びを甘受することほど愚かなことはない。
 手前らを教訓とし、同じ過ちを繰り返さないために
 他の世界の人類を殲滅する。」

ジェラード 「……それが貴様の言い分か?」

アートレーゼ 「!!! 待ちなさい、ゾロディエール!!!
 バルセザリアールの命令は魔導文明のみを滅ぼす事じゃなかったの!?
 いつから人類の抹殺になったのよ!?」

ゾロディエール 「たった、今からだ。」

ジェラード 「!!!!」


▽ ……。



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