『終わらない夢の果てに』
「……全て、終わったのか?」
「……ええ…………そうよ。」
「何故そんなに悲しそうな顔をするのだ。
悲しければ、泣けばいい。
思う存分泣けばいいだろう。」
「私は泣けないわ。
泣くわけにはいかないの。
月の落下に気づいてしまったのは、私だから……。」
「ならばどうしてそんな寂しい笑い方をする?
エンディルもいなくなった。
全て終わったのだから、もう関係ないことではないのか?」
「ダメよ……まだここに一人、エンディルがいるわ。」
「え……?」
「私が居なくならない限り、この世界からエンディルは消えないわ。」
「……アートレーゼ……。」
「ジェラード。
貴方のこと、嫌いじゃなかったわ。
――忘れないで、私のこと。」
「…………もう、この世界には来ないのか?」
「あなたまで悲しい顔しないでよ。
この世界から離れられなくなっちゃうじゃない。
……さよならの一言も、言うのが辛くなるでしょ……。」
「答えてくれ。もうこの世界には来ないのか?」
「私は――人間じゃないから。」
「……だったら、
人間に戻れば、
この世界に戻ってくるんだな?」
「…………え?」
「……アートレーゼ。」
「なに?」
「――待ってろ。
どこにいても、俺様は迎えに行く。
人間に戻る方法を見つけて。」
「…………うん。
待ってる、ジェラード。
だから、早く迎えに来て……。」
「ああ、どこの世界にいても、必ず。」
「……一度だけ、
貴方のために扉を開いてあげる。
封印された、魔導で。」
「!?」
「EFFEL VVI MERRIUMM(エフェル・ヴィ・メルリアム)
ヨffne die n臘htlich T・ !(開け夜の扉)
Die neue Welt fanget hiervon an.(新しき世界ここより始まれ)」
「Tor !(ゲート!)」
「……世界間、転移の扉よ。」
「……!!!」
「ゾロディエール達の使う転移法とは異なるから、
彼らの陣営に追跡されることはないわ。
でも……どこの世界に出るかは貴方次第。」
「俺、次第?」
「そう。貴方が望んだ世界に通じる扉よ。
一度も世界転移をしたことのない人間が望むのはどんな世界なのか……
どんな世界に出るのかは分からない。」
「望む世界……。
アートレーゼを、
元の人間に戻すことのできる知識の存在する世界を。」
「――自分に、自信を持って。
そうすればきっとその世界へとたどり着けるはず。
私は、別の世界で待ってるから…………。」
「……わかった。」
「待ってる、からね…………。」
「…………行ったのか?」
「俺は、彼女を人間に戻してみせる。」
「そう、願わくば、
体内から魔力を除去できる方法を。
例えそれが、禁断の知識でも――――」