Forbidden Palace Library #W01 『真実の継承者(前編)』

『真実の継承者(前編)』




ブランドブレイ王国
ステラ港


星の港、ステラ。
遙か昔の言葉でその意味を持つ、この港の歴史は古い。
一説には、ラファエル王国以前にまで……つまりは旧文明時代まで歴史をさかのぼれるという噂もある。

いくつもの街道が交わる要所となっているこの都市は、大陸で最大の規模を誇る。ありとあらゆる物が揃うため、「市場都市」と称され事もある。
唯一の難点は、都市規模が故に物価も高いということだ。



翌日。

マリー 「そう……やはりシェザに、行くのですね。」

ウィリアム 「ああ。それが俺の旅の目的だからな。」
(それに……このセディとかいう男もまた魔導原本を探しているという。
 もしかすると、本当に実在するのかもしれない……興味が湧いてきたな。)

マリー 「……気を、つけて下さいね。」

ウィリアム 「マリーこそ。気をつけてエルメキア礼法国へ帰れよ。」

マリー 「はい。…………あの、」

ウィリアム 「なんだ?」

マリー 「その……いつか、また……会えますよね?」

ウィリアム 「ああ。
 ……きっと会えるさ。」
(何故だろう。胸が、痛い。締め付けられるように。)

サード 「世界は広い。そして人と人の出会いは一期一会。
 ああ、愛しの君よ、どこへ行くのか。
 だからせめてその前にその体を……。」

マリー 「ひどいですわっ!
 そんな目で見ていたんですのねっ!
 ……蹴りっ!!!」


ごんっ!

ウィリアム 「いってぇぇぇぇっ!」

サード 「とか言ったらどうするんだろう。うーん、でも負けない。」

マリー 「え?……ひょっとして、また誤解でしたの?」

ウィリアム 「……こいつが、こいつがあることないことべらべらと喋るから……。」

サード 「誰?そんな事するのは?」

ウィリアム 「お前以外に誰がいる?
 ……5月騎士団だか7月騎士団だか知らないけど、
 騎士団長ってこんな奴がやっててつとまる役職なのか?」

サード 「ウィリアム君、俺が所属しているのは7月(Quintilis)騎士団。
 5月(Maius)騎士団じゃないよ。
 そういえば5月騎士団のラグランジュ騎士団長ってうるさいんだ本当に。」

ウィリアム 「うるさいのはお前の方だと思うんだが……。」

サード 「代々団長を務めているのからすぐに古くさい習慣を重んじるんだよね。
 そういえば家訓に従って代々生まれた娘に花の名前を付けているらしいけどさ、
 ラフレシアなんて名前つけられたら嫌だよねっていうか俺は嫌。でも負けない。」

ウィリアム 「ダメだ、暴走は止まりそうにない。」

マリー 「……とりあえず、ここでお別れですわね。
 私も仕事が終わり次第、エルメキアに帰らなければなりませんし。
 お元気で、ウィル。」

ウィリアム 「ああ……元気でな、マリー。」

マリー 「……さようなら。」


・・・・・

サード 「行っちゃったね、マリーさん。」

ウィリアム 「ああ。」

サード 「本当は、止めて欲しかったんじゃないのかな、マリーさん。」

ウィリアム 「え?」

サード 「俺もそろそろ引き上げるとするか。
 しばらく滞在した後、
 シルバニアに行かなくちゃいけないしね。」

セディ 「ふっ。早くしろ、ウィリアム。馬車に乗り遅れるぞ。」

ウィリアム 「ああ、いま行く。」
(……マリー……また、会えるよな。
 今は、そう信じていよう。)


▽……。



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