Forbidden Palace Library #W01 『真実の継承者(前編)』

『真実の継承者(前編)』




フェーゴ共和国
氷都シェザ



シェトランド海に面した大陸最南端の都市、シェザ。
夏場でも涼しく、万年氷河が残る気候ゆえに『氷都シェザ』と呼ばれることが多い。

それでも人類が居住しているのは、大陸有数の漁港の一つであるがため。
東から西への海流の激しさ故に、遠い海から珍しい魚が流されてくる事も少なくないという。

ローラ 「あー、あのときのおっちゃんっ!!!」

セディ 「……ふっ。
 誰かと思えばあの時の小娘か。
 だから私はおっちゃんではないと……」

ローラ 「わかった。で、おっちゃん、なにしてるの?」

セディ 「ふっ。貴様、人の話を聞いていないだろう?」

ウィリアム 「……おっちゃん。」

セディ 「ふっ。ウィリアム。
 貴様までそういう事を言うのか。
 ……それ相応の覚悟は出来ているんだろうな?」

ウィリアム 「ああ、いやいや、なんでもない。
 ただの冗談だ。気にしないでくれ。
 ……ところで知り合いなのか、セディ?」

セディ 「ふっ。まぁな。」

ローラ 「というわけで、はい。」

セディ 「ふっ。なんだ、その手は?」

ローラ 「10年前の報酬の追加分をちょーだい。
 1リルは少なすぎるとおもうなぁ。
 ろうどうきじゅんほういはんー。」

セディ 「ふっ。
 難しい言葉をあまり意味も分からず使いおって。
 ……そういうところは全然変わってないな。」

ローラ 「でもおっちゃんも10年前と全然かわってないー。」

セディ 「ふっ。余計なお世話だ。」

ウィリアム 「10年前?」

セディ 「ふっ。10年前、この町でちょっとした事件をきっかけに知り合ってしまってな。」

ローラ 「あー、なんか思いっきり不満そうー!」

ウィリアム 「……なぁセディ、おまえ本当は何歳なんだ?」

セディ 「ふっ。秘密だ。
 ……こんなところで油を売っている時間はない。
 目的の場所に行くぞ、ウィリアム。」

ローラ 「え?おっちゃんいつからオイル商人になったの?」

セディ 「……ふっ。意味が違う、意味が。
 余計な時間を浪費している暇はないと言うことだ。
 とっとと探しに行くぞ、ウィリアム。」

ローラ 「あ、あたしも行くーっ!!!」


てくてくてくてく。

セディ 「……ふっ。何故お前がついてくる?」

ローラ 「面白そうだからー。だって、弟からかうのにもあきたしー。」

セディ 「弟?10年前はいなかった気がするのだが。」

ローラ 「うん。今年8歳になるんだけどねぇ、
 最近からかっても面白くないんだもん。
 生意気に反抗すること覚えちゃって。」

セディ 「ふっ。
 貴様の姉はどうした、あの高飛車な姉は。
 奴と遊んでいれば良いではないか。」

ローラ 「オーロラおねぇちゃんはねぇ、去年押し掛け女房するんだって家出した。」

ウィリアム 「家出?」

セディ 「ふっ。どこにだ?」

ローラ 「となりのおにぃちゃんの家に。」

ウィリアム 「……それって家出っていうのか?」

ローラ 「とにかく、あたしついてくもーん☆ わくわく」

セディ 「ふっ。子供の来るところではない。帰れ。」

ローラ 「あたしもう子供じゃないもーん、16歳だもーん。」

セディ 「ふっ。
 6歳だろうが16歳だろうが、
 十の位を四捨五入すれば同じ事だ。」

ウィリアム 「いや、なんでそこで十の位を四捨五入するんだよ?」

ローラ 「ぷんぷん。
 とにかくローラ子供じゃないもーん。
 ついていくったらついていくーっ!」

ウィリアム 「……こ、子供だ。」


▽……。



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