Forbidden Palace Library #W01 『真実の継承者(前編)』

『真実の継承者(前編)』




フェーゴ共和国
氷都シェザ



シェトランド海に面した大陸最南端の都市、シェザ。
夏場でも涼しく、万年氷河が残る気候ゆえに『氷都シェザ』と呼ばれることが多い。

それでも人類が居住しているのは、大陸有数の漁港の一つであるがため。
東から西への海流の激しさ故に、遠い海から珍しい魚が流されてくる事も少なくないという。


宿屋『ベクレル』1階 食堂

ウィリアム 「おはよう、セディ……ふぁ〜あ。」

セディ 「ふっ。眠そうだな、ウィリアム。」

ローラ 「夜更かし? パズルでもやってたの?」

セディ 「ふっ。何故パズル?」

ローラ 「昔オーロラおねぇちゃんと二人でクロスワードやっててね、
 どうしても最後の1つがわからなくてー。
 考えても考えても分からなくて、結局その日生まれて初めて徹夜しちゃった☆」

セディ 「ふっ。愚か極まりなき。」

ローラ 「あ、ひどーいっ!そーゆーこというわけー?
 ぷんぷん。
 それで、結局夜遅くまで何やってたの?」

ウィリアム 「まぁパズルみたいなものと言えばパズルみたいなものかもな。
 ……ってローラ、何気なく会話に参加しているけどさ、
 お前、どうしてこんな朝早くからここにいるんだ?」

ローラ 「だってあたしの家、この宿屋と同じ町内だもん。」

セディ 「ふっ。違う宿屋を選ぶべきだったな。」

ウィリアム 「それよりセディ、お前はこれからどうするんだ?しばらくここに滞在するのか?」

セディ 「ふっ。あの紙が手に入った以上、ここに留まる理由もあるまい。
 他の2枚の紙の行方は不明。在処すら分からぬ。
 とすれば、エンディルと対峙するために北上する。」

ウィリアム 「北上ってぇと……どの辺りに行くんだ?」

セディ 「シルバニア公国。恐らくエンディルはそこに攻めてくるはずだ。」

ローラ 「えー?どうしてそんなことがわかるのー?」

セディ 「ふっ。わかるからわかるのだ。
 この肉体を手にしてからは自然と察することが出来るようになってな。
 ……所詮言っても分かるまい。」

ローラ 「???」

セディ 「ふっ。それより貴様はどうするのだ、ウィリアム。
 目的通り魔導原本の存在を確かめたのだろう。
 セリフォスに戻るのか?」

ウィリアム 「とりあえずまだ考えていない。
 このまま帰ってもいいんだけどよ、何か釈然としないものがあるんだよな。
 ……まぁどうせ帰る方角は同じだから、シルバニアまでは付き合うよ。」

セディ 「ふっ。わかった。好きにするがいい。」

ローラ 「……ねえ、あたしには聞いてくれないの?」

セディ 「ふっ。貴様に聞いてどうする。シルバニアまで来るとでもいうのか?」

ローラ 「うんっ。」

ウィリアム 「………………おい、なんて言った、今?正気か?」

ローラ 「だってなんとなく面白そうなんだもん。」

ウィリアム 「それだけか?」

ローラ 「えへへー。」

セディ 「………………。」

ウィリアム 「セディの話を信じれば、エンディルの奴らが攻めてくるっていうんだぜ?」

ローラ 「だってエンディルを一度ぐらい見てみたいじゃない。」

セディ 「ふっ。本当にそれだけの理由か?」

ローラ 「えへへー、まだあるけど内緒。」

セディ 「ふっ。悪いことは言わん。子供の1人旅は危険だからやめておけ。」

ローラ 「あー、またそうやって子供扱いするーっ!」

セディ 「ふっ。子供を子供と言って何が悪い。」

ローラ 「いいもん。そんなこと言うなら無理にでもついていってやる。」

セディ 「ふっ。
 わかったわかった。そういうことにしておいてやろう。
 ……さてと、ウィリアム。食べたら行くぞ。」

ウィリアム 「おう。」

ローラ 「はーい。」

セディ 「……ふっ。
 待てローラ。
 貴様、本気でついてくる気か?」


▽……。



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