『真実の継承者(前編)』
シルバニア公国 首都シルバニア シルバニア公国がかつての宗主国、ブランドブレイ王国より分離したのが大陸歴179年。 その後の都市建設を経て、正式にこのシルバニアが首都となったのが大陸歴183年。 かつて存在したというラファエル王国の首都シャロンを模して作られた、白銀の都シルバニア。 魔導金属製の目映い城壁が、都市を囲むように荘厳とそびえ立っている。 |
「再会を祝して、乾杯っ!」
「かんぱーいっ!」
「かんぱい。」
「あーっ!
みんなお酒飲んでずるいーっ!
私も飲むーっ!!!」
「ふっ。貴様はまだ未成年だろうが。」
「飲むーっ。」
「…………。」
「けちーっ!」
「ふっ。私はまだ何も言っていないぞっ!!!」
「ローラさん、今はまだジュースで我慢なさって下さいね。」
「ぶーぶーぶー。」
「えい。」
「ひゃっ!?
ちょっとぉ、何するのよっ!?
突然ほっぺた触らないでよぉ。」
「君があまりに魅力的だったから……。
思わず触れたくなってしまって。
いや、出来ることならその美しい白い肌に口づけを、」
「えっ!?えっ!?」
「なんて言ったら格好いいんだろうなぁと。」
「びっくりさせないでよねー、もう。」
「いや、俺は本気だ。」
「えっ!?えっ!?」
「なんて言ったらもっと格好いいんだろうなぁと。でも負けない。」
「サード、酔ってるだろ?」
「いや、酔ってない酔ってない。
その証拠にほら、
ちゃんとこの間のスコップの事覚えてるし。」
「全然関係ないだろうが。それに脈略ないぞ、おい。」
「アントニオ君に会うと時々スコップくれるんだ。
そういえば彼の父親はこのあいだ小さい植木鉢くれたなぁ。
いい人たちだ。」
「園芸屋かい。」
「いや、アントニオ君も騎士団長。」
「……やっぱりロクでもないだろ、お前の職場。」
「そーっと。そーっと。」
「ふっ。類は友を呼ぶということだな。」
「誰だろうね、類。」
「お前だ、サード。」
「よいしょっ。えいっ。」
「でも俺はラグランジュ騎士団長みたいに娘に花の名前つけたりしないし、
アントニオ=コペルニクス騎士団長みたいにスコップ持って職場に出ないし、
……そういえば彼の父親も現役の時には植木鉢を肌身はなさず持っていたな。」
「わかったわかった、お前の職場にはロクな奴がいない事がよーく分かった。」
「こくっこくっこくっ。」
「あっ!ちょっと、ローラさんっ!
なにサードさんのお酒飲んでいるんですっ!?
貴方まだ未成年でしょっ!?」
「だってみんな飲んでるんだもーん。
だから話に夢中になっている間にもらっちゃおうかなーと。
……お酒って結構おいしい。」
「あー、俺のエルメキアワインが。」
「ふっ。
最高級のワインを、それも他人が注文したものを飲めば
さぞかし美味しいことだろうな。」
「あ、もっとちょーだいー☆」
「ふっ。こら、それは私のだ。貴様にはやらん。」
「おっちゃんのけちー。」
「ふっ。だから私はおっちゃんではないと言っているだろうが。」
「けちーけちー。」
「けちー。」
「ふっ、サード。どうやら貴様も一度痛い目を見ないと分からないようだな。」
「でも負けない。」
「それにしても美味しいワインですわねぇ。
ウィル。そう思いませんこと?
……ウィル? あら、いませんわね。」
「あれれれれ?さっきまで話に加わっていたのに?」
「そういえばいないね。」
「ふっ。そのうちに戻るだろう。」
「それもそうですわね。
……それにしてもどこに行ったのかしら。
一言ぐらい断ればいいのに。」
「……いないからワインもらっちゃおっと。」
「あ、こらっ!」