『真実の継承者(前編)』
シルバニア公国 首都シルバニア シルバニア公国がかつての宗主国、ブランドブレイ王国より分離したのが大陸歴179年。 その後の都市建設を経て、正式にこのシルバニアが首都となったのが大陸歴183年。 かつて存在したというラファエル王国の首都シャロンを模して作られた、白銀の都シルバニア。 魔導金属製の目映い城壁が、都市を囲むように荘厳とそびえ立っている。 |
(だが、ひとまずこれで安心だな。
まさか、王城に隠してあるとは誰も思わないだろうな。
……やっぱり公爵様に相談して正解だったな。)
(仮にあの隠し部屋の存在が露見しても、一般人があの部屋までたどりつくのは不可能。
おそらくは3階まで到達する前に、衛兵に取り押さえられるだろうしな。
仮に辿り着いたとしても、隠し部屋の場所と開け方までは分からないだろう。)
(あ、酒場が見えてきた。
……ん?扉のところに誰かが立ってる。
誰だ?……え?マリー?)
「……どこに行っていたの?」
「マリー……。
ひょっとして今までずっと、
ここで待ってくれていたのか?」
「あたりまえでしょ。心配だったんだからね。」
「すまない。
ところで……みんなはもう宿屋に戻ったのか?
それともまだ……?」
「まだ酒場で飲んでるわよ。
……ウィル。
もう二度と、会えなくなるのはいや。」
「マリー……。」
「お願い。私から離れないで……。」
「ああ、わかった……愛してる、マリー。」
「私もよ、ウィル……。」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「……もぅ、強引なんだから……。」
「…………俺って、こんなに軽薄だったかな。」
「どうしたの?」
「……今初めてキスしたばかりなのに……それ以上のことを要求しようとしている。」
「ん。いいわよ。」
「……え?」
「何度も言わせないで、馬鹿っ!」
「……マリー……。」
「私だって、まだ貴方と会った回数数えるほどなのに、
自分がどうかしたみたいに……その……ウィルの事が愛しくて……。
…………もう、どうしていいかわからないじゃないっ!」
「……愛に時間は関係ない。
理由がないのと同じぐらい、な。
自分の気持ちに素直になればいいのさ。」
「ん…………愛してる。愛してる、ウィル。」