Forbidden Palace Library #W01 『真実の継承者(前編)』

『真実の継承者(前編)』




シルバニア公国
首都シルバニア



シルバニア公国がかつての宗主国、ブランドブレイ王国より分離したのが大陸歴179年。
その後の都市建設を経て、正式にこのシルバニアが首都となったのが大陸歴183年。

かつて存在したというラファエル王国の首都シャロンを模して作られた、白銀の都シルバニア。
魔導金属製の目映い城壁が、都市を囲むように荘厳とそびえ立っている。


繁華街 4つ星の酒場前

ウィリアム (だが、ひとまずこれで安心だな。
 まさか、王城に隠してあるとは誰も思わないだろうな。
 ……やっぱり公爵様に相談して正解だったな。)


てくてくてくてく


ウィリアム (仮にあの隠し部屋の存在が露見しても、一般人があの部屋までたどりつくのは不可能。
 おそらくは3階まで到達する前に、衛兵に取り押さえられるだろうしな。
 仮に辿り着いたとしても、隠し部屋の場所と開け方までは分からないだろう。)


てくてくてくてく


ウィリアム (あ、酒場が見えてきた。
 ……ん?扉のところに誰かが立ってる。
 誰だ?……え?マリー?)

マリー 「……どこに行っていたの?」

ウィリアム 「マリー……。
 ひょっとして今までずっと、
 ここで待ってくれていたのか?」

マリー 「あたりまえでしょ。心配だったんだからね。」

ウィリアム 「すまない。
 ところで……みんなはもう宿屋に戻ったのか?
 それともまだ……?」

マリー 「まだ酒場で飲んでるわよ。
 ……ウィル。
 もう二度と、会えなくなるのはいや。」

ウィリアム 「マリー……。」

マリー 「お願い。私から離れないで……。」

ウィリアム 「ああ、わかった……愛してる、マリー。」

マリー 「私もよ、ウィル……。」

ウィリアム 「…………。」

マリー 「…………。」


ちゅっ

ウィリアム 「…………。」

マリー 「……もぅ、強引なんだから……。」

ウィリアム 「…………俺って、こんなに軽薄だったかな。」

マリー 「どうしたの?」

ウィリアム 「……今初めてキスしたばかりなのに……それ以上のことを要求しようとしている。」

マリー 「ん。いいわよ。」

ウィリアム 「……え?」

マリー 「何度も言わせないで、馬鹿っ!」

ウィリアム 「……マリー……。」

マリー 「私だって、まだ貴方と会った回数数えるほどなのに、
 自分がどうかしたみたいに……その……ウィルの事が愛しくて……。
 …………もう、どうしていいかわからないじゃないっ!」


ぎゅっ

ウィリアム 「……愛に時間は関係ない。
 理由がないのと同じぐらい、な。
 自分の気持ちに素直になればいいのさ。」

マリー 「ん…………愛してる。愛してる、ウィル。」


▽……。



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